最新記事
考古学

ネアンデルタール人「絶滅」の理由「2集団が互いに無視していた」...ゲノム解析から驚きの新説

The Last Neanderthal

2024年11月4日(月)11時20分
アリストス・ジョージャウ(本誌科学担当)

ローヌ渓谷

ローヌ渓谷(写真)で発見された「最後の」ネアンデルタール人は従来の見方を覆すかもしれない LUDOVIC SLIMAK

「つまり、ヨーロッパ最南端からフランスのローヌ渓谷までの地中海地域にこれまで知られていなかったネアンデルタール人が存在していたということだ」

研究結果は、複数の孤立した後期ネアンデルタール人の集団が絶滅直前にヨーロッパに存在したことをうかがわせるだけではない。ネアンデルタール人の社会組織にも光を当て、絶滅までの1000年間は地理的には近い距離であっても異なる集団間の交流は限られていた可能性を示唆している。


一般に、小規模で隔離された集団の生活は、その生き残りには不利になると考えられている。

「他の集団との接触は集団にとっては良いこと」で、「長期にわたって孤立すると遺伝的多様性が乏しくなり、気候の変化や病原体に対する適応力が低下し、社会的にも知識を共有することがなくなり、集団としての進化も停滞する」とビマラは指摘している。

これらの要因がネアンデルタール人の絶滅に重要な役割を果たしたのかもしれない。

「私たちの研究は、遺伝的孤立と規模の小ささがネアンデルタール人の集団の一般的特徴だった可能性を示すさらなる証拠だと思う」とシコラは本誌に語った。

「初期の現生人類の集団がはるかに相互のつながりがあったのとは大きな違いだ。そうした社会組織の違いがネアンデルタール人の衰退にどの程度重大な役割を果たしたのかを調べるには、さらに多くのネアンデルタール人の遺伝情報が必要だ」

ニューズウィーク日本版 コメ高騰の真犯人
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年6月24日号(6月17日発売)は「コメ高騰の真犯人」特集。なぜコメの価格は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

報復の選択肢検討とイラン外相、高濃縮ウランは移送と

ワールド

ロシアと中国、米のイラン攻撃を強く非難 対話呼びか

ワールド

焦点:トランプ氏のイラン攻撃は「最大の賭け」、リス

ワールド

韓国、米に懸念表明へ 半導体装置の特例措置撤回観測
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:コメ高騰の真犯人
特集:コメ高騰の真犯人
2025年6月24日号(6/17発売)

なぜ米価は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 2
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 7
    イタリアにある欧州最大の活火山が10年ぶりの大噴火.…
  • 8
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?.…
  • 9
    「アメリカにディズニー旅行」は夢のまた夢?...ディ…
  • 10
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中