最新記事
テクノロジー

終末論に傾倒し、グーグルを警戒...オープンAIのアルトマンはどんな人物か、なぜCEOを解任されたか

2023年11月20日(月)12時15分
ニティシュ・パーワ(スレート誌)
サム・アルトマン オープンAI

スター経営者だったアルトマンの退任でオープンAIはどうなる? CARLOS BARRIAーREUTERS

<「チャットGPT」と「DALL・E2」を引っ提げ、AI革命を牽引してきたサム・アルトマン電撃解任の舞台裏>

対話型AI(人工知能)「チャットGPT」の開発で知られるオープンAIが11月17日、サム・アルトマンCEOの即時退任を発表した(取締役も退任)。事実上の解任とみられる。「正式な後継者」を探す間、当面ミラ・ムラティCTO(最高技術責任者)が職務を引き継ぐという。

(編集部注:退任発表後、投資家がオープンAIに対しアルトマンの復帰を働きかけているとの報道が出ている)

おそらくこの10年で最も有名で影響力のあるAI企業の衝撃的ニュースだ。同社が2022年後半にリリースしたチャットGPTと画像生成AI「DALL・E(ダリ)2」は、文字どおりAI革命を先頭に立って引っ張った。アルトマンはブームの「顔」として、記者や議員、世界中の指導者に自社とその魔法のような技術を解説してきた。

そもそもどんな人物?

アルトマンの半生は典型的なシリコンバレーの成功物語だ。2005年に19歳でスタンフォード大学を中退。位置情報共有ソーシャル・マッピング・サービス「ループト」を共同で設立し、この業界での地歩を固めた。

その後自身のベンチャーキャピタルを立ち上げて経験を積み、2014年にYコンビネーターの社長に就任。注目企業に投資する巨大ファンドの経営を担った。

さらに翌年、優秀な技術者を擁する非営利団体オープンAIの設立を発表。AIへの警戒を主張していたイーロン・マスクと共に共同会長に就き、大量の資金を投入した。2020年までにアルトマンはYコンビネーターから完全に離れ、オープンAIに集中し始めた。

ただし、AIは最大の関心事であると同時に、最大の恐怖でもあった。終末論に傾倒していたアルトマンは、いずれAIは自分で考えることを学び、人類文明を破壊しかねないと警告するテクノロジー界の思想家たちに影響を受けていた。

アルトマンは、グーグルなどの巨大企業にはAIを任せられないと考え、AIの暴走に歯止めをかける適切なガイドラインと規制を主張。そのモデルとして、オープンAIを成長させることを望んでいた。

退任の理由

同社取締役会の声明にはこうある。

「アルトマン氏の退任は、取締役会の熟慮を重ねた検討プロセスを経たものであり、同氏は取締役会とのコミュニケーションにおいて一貫して率直でなかったため、取締役会の責任遂行に支障を来したとの結論に達した。取締役会はもはやオープンAIのリーダーを続けるための同氏の能力を信頼できない」

同社幹部からもアルトマンからも具体的な話は出ていないが、その背景に何らかの問題があったと推察できる。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 9
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 10
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中