最新記事

銃規制

3Dプリンター製の自動小銃が米社会に及ぼす脅威

EASY TO MAKE 3D-PRINTED GUNS

2021年3月12日(金)17時20分
アリ・シュナイダー(ジャーナリスト)

ジェイコブはFGC9の生みの親として、英ジャーナリストのジェーク・ハンラハンの短編ドキュメンタリー『プラスチック・ディフェンス』でも紹介された。一方のアイバンはFGC9の銃身と弾倉をデザインした男で、過去にワイアード誌やニュー・リパブリック誌のインタビューを受けている。

彼らは有力SNSのレディットでも手作り銃に関するスレッドに参加しているが、たびたび運営側から問題視されてきた。アイバンは何度も利用禁止処分を受けたが、そのたびにプロフィールを作り直して対応してきた。一昨年にはツイッターのアカウントも削除されたが、そこは慣れたもの。別のハンドル名を使って、今は堂々と復帰している。

筆者は独自のルートでアイバンの身元を突き止め、電話で連絡を取ることができた。ただし自分と家族の安全を守りたいという本人の希望により、本稿では仮名のアイバンで通すことにしたい。

現在23歳のアイバンは、コンピューターサイエンスの学位を取得して2020年に大学を卒業。イリノイ州南部で両親と暮らしている。実家は一見どこにでもある郊外住宅だが、裏には広い野原と森があって、そこに彼の「射撃練習場」があり、その一角に自家製銃の設計とプリント専用の小屋がある。

アメリカ中西部だから、実家では銃が身近な存在だった。アイバンは高校の授業で3Dプリントの技術と出合った。初めて3Dプリンターを買ったときは銃を作ろうなどと考えておらず、古い自動車の内装をきれいにするのが目的だったという。

プリンターで銃を作り始めたのは、その数年後のこと。きっかけはAR15のロアレシーバーを「プリントした」人々についてのオンライン記事を読んだことだった。5回ほどの試作を経て完成した銃は2000発以上の射撃に耐えた。これで自信をつけた彼は、以後3Dプリント銃の製造にのめり込んだ。

magw210312-3d02.jpg

2020年2月にドイツ・ハーナウでは銃乱射により9人が死亡した Kai Pfaffenbach-REUTERS

「誰でも入手可能」を目標に

彼は18年の「ソーシャルメディアブーム」なるもの(3Dプリント銃が一部の人だけでなくネット上で大勢の支持者を獲得するまでに成長したこと)に積極的に参加した。アイバンが初めてジェイコブと連絡を取ったのは、レディットとツイッター上にある自家製銃設計者の集まりの場だった。ジェイコブはアイバンに設計ソフトの使い方を教えてくれと頼み、そこからFGC9が生まれた。その後2人は何度も設計で協力しているが、いまだに互いの身元を知らないという。

ディターレンス・ディスペンストは1月半ばまで、暗号化チャットアプリの「キーベース」上で活動していた。グループのメンバーは2万7000人近くに増えていたが、アイバンによれば、実際に活動に参加していたのは数千人程度だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ首都と周辺に夜間攻撃、8人死亡・多数負傷

ワールド

イスラエル、イラン首都に大規模攻撃 政治犯収容刑務

ワールド

ゼレンスキー大統領、英国に到着 防衛など協議へ

ワールド

プーチン氏、米の攻撃「正当性なし」 イラン外相と会
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:コメ高騰の真犯人
特集:コメ高騰の真犯人
2025年6月24日号(6/17発売)

なぜ米価は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「過剰な20万トン」でコメの値段はこう変わる
  • 2
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 3
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり得ない!」と投稿された写真にSNSで怒り爆発
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    イランとイスラエルの戦争、米国より中国の「ダメー…
  • 6
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 7
    「イラつく」「飛び降りたくなる」遅延する飛行機、…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    EU、医療機器入札から中国企業を排除へ...「国際調達…
  • 10
    ホルムズ海峡の封鎖は「自殺行為」?...イラン・イス…
  • 1
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 2
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 6
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 7
    イタリアにある欧州最大の活火山が10年ぶりの大噴火.…
  • 8
    ホルムズ海峡の封鎖は「自殺行為」?...イラン・イス…
  • 9
    イランとイスラエルの戦争、米国より中国の「ダメー…
  • 10
    「アメリカにディズニー旅行」は夢のまた夢?...ディ…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 9
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中