最新記事

脊椎

その腰痛は大丈夫? 手術で治療すべき腰痛とは

THE CORRECT BACK SURGERY FOR YOU

2020年4月14日(火)13時50分
長田昭二

STEVEDANGERS/ISTOCKPHOTO

<椎間板ヘルニア、腰部脊柱菅狭窄症など、構造が複雑で疾患の種類も多い背骨の異常については、正確な判断とそれぞれの患者にあった治療方法を採用することが重要だ。本誌特別編集ムック「世界の最新医療2020」より>

「背骨の構造」を正しく知っているだろうか。中には背骨を「少し柔軟性を持つ1本の骨」くらいに思っている人もいるようだが、もちろんこれは大間違いだ。背骨のことを正確には「脊椎」と呼ぶ。この脊椎は、首の「頸椎」から始まり、背中の胸椎、腰の「腰椎」、そして骨盤の一部に組み込まれている「仙椎」までをひとまとめにした総称。ひとまとめにされてはいるが、実際には頸椎は7個、胸椎は12個、腰椎と仙椎それぞれ5個の「椎骨」と呼ばれる骨が複雑に連なって構成されている。

202003NWmedicalMook-cover200.jpg骨そのものは硬質で柔軟性はない。なのになぜ背中を折り曲げられるのか──。それは、それぞれの椎骨が独立していて、それぞれの間に「椎間板」という柔らかい組織が挟まっているから。椎間板が緩衝材になることで、人は前かがみになったり振り向いたりすることができるのだ。

人の脊柱は、どんなに姿勢のいい人でも直線ではない。頸椎はやや前に、胸椎はやや後ろ(背中側)に、そして腰椎は再び前側に膨らむようにカーブし、全体的に「緩やかなS字状」を呈している。

人の頭部の重さは、全体重の約1割といわれている。体重が70キロの人であれば、7キロの重量を、タテになった背骨で一日中支え続けなければならない。

これを「直線」の背骨で支えていたら、たとえ椎間板がクッションになったところで背骨は破損してしまう。背骨がS字状になっているのは、頭など体の上部の重量を放散させ、脊柱の負担を軽くするためなのだ。

椎骨同士は複雑に連なっている、と書いたが、椎骨の形状もまた複雑だ。断面図を見ると、椎骨の中央には大きな穴が開いており、椎骨が連続することでこの空間はトンネルのような空洞を形成している。ドーナツをいくつも積み上げたようなイメージだ。

このトンネルを「脊柱管」と呼び、中を神経の束が走っている。そして、この束から派生する神経は、脊椎と脊椎の隙間から細い神経を枝分かれさせているのだ。

わずかな異常が大きな痛みに

人の体というものはよくできていて、複雑な構造の連続する脊柱管を通る脊髄や「馬尾(ばび)」などの神経の束も、わずかに空いた脊椎の隙間を通る神経も、脊椎そのものに損傷がない限り、どんな動きをしても影響を受けない、つまり痛みを発することはないのだ。脊椎と神経はさまざまなパーツがそれぞれ「正常を保つ」ことにより、上半身の可動域を維持し、脊髄や神経の安全も保っている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 4

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 5

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 9

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 10

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 9

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中