最新記事

健康

頭痛やめまい、「これ病院に行くべき?」はネットじゃ分からない

2018年9月5日(水)17時00分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

突然の症状は本当に危険信号なのか

特に、突然その症状が起こったと聞くと、医師は「ドキッとする」という。「出かけようとして立ち上がったとき」とか「メールをチェックしていたら」というように、具体的に何をしているときに起こったかを言える場合、もしくは睡眠中に目が覚めたような場合だ。

こういうときは重大な病気の目印である可能性があるため、医師は、症状の時間軸に注目する。いつ、どれくらい急に、どれくらい続いたのか、繰り返し起こったか、どう変化したか......といったことから、さらに病気を絞り込んでいくのだ。

こうした絞り込みを、自分でもできるようにしたのが本書だ。「めまい」「頭が痛い」「しびれ」「ろれつが回らない」といったさまざまな症状について複数のチェック項目が設けられ、それに答えることで、すぐ病院に行くべきなのか、しばらく様子を見て大丈夫なのかといった緊急性が分かるようになっている。

具体的には、すぐに救急車を呼ぶか救急外来に駆け込む必要がある場合、救急車を呼ぶほどではないがその日のうちに受診したほうがいい場合、1〜2日以内に受診したほうがいい場合、1〜2週間以内の受診で大丈夫な場合、という4段階に分けられている。

すぐに病院に駆け込む人がいる一方で、「どうせ大したことない」と思って症状を放置して悪化させてしまう人がいることも事実だ。そこで本書では「寝たきり」「がん」「認知症」になるかもしれない病気に分類し、チェック項目に当てはまる場合はすぐ病院に行くよう促している。

今後求められる医師の「問診力」

質問を繰り返す「問診」によって、医師は必要な情報を集め、原因を突き止めていく。だが、医学的な知識のない患者から得たい情報を引き出すには、技術が必要だ。それぞれの病気に特徴的な症状があるかどうか、詳しく突っ込んだ質問をしなければ、正しい診断は下せない。

山中医師はそれを「攻める問診」と呼ぶ。

昔から、内科の名医たちは「問診だけで80パーセントの病気は診断が可能」と言ってきたという。しかし若手の医師は経験が少ないため、的確な質問ができずに、血液検査や画像診断に頼りがちになる。同様に患者のほうでも、どうしてもCT検査をしてほしいと頼む人もいるという。


医療に絶対ということはありません。しかし、症状や診察所見、検査結果を詳しく分析することにより、かなり正確な診断をすることができます。少ない確率の疾患まで疑い検査を重ねては、医療費の膨張を招くばかりか、患者さんにとってもメリットは少ないと思います。(287ページ)

今後、遠隔診療が本格的に導入されていくことを考えれば、医師の「問診力」はますます重要になってくるだろう。だがその前に、自分自身である程度の判断ができれば、無駄な時間やお金を使うこともなく、無用な不安に駆られることもない。

ネットの情報だけでは絞り込みができないために、念のため病院に行っておこうと思う人もいるわけだが、突然の強い頭痛のような症状でも、慌てて病院に行く必要のないケースは、実はかなりあるそうだ。そうしたことを知っておくだけでも、大きな安心材料となるはずだ。


『その症状、すぐ病院に行くべき? 行く必要なし?
――総合診療医・山中先生がつくった家庭でできる診断マニュアル』
 山中克郎 著
 CCCメディアハウス


202404300507issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年4月30日/5月7日号(4月23日発売)は「世界が愛した日本アニメ30」特集。ジブリのほか、『鬼滅の刃』『AKIRA』『ドラゴンボール』『千年女優』『君の名は。』……[PLUS]北米を席巻する日本マンガ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米金利先物、9月利下げ確率60%に小幅上昇 PCE

ビジネス

ドル34年ぶり157円台へ上昇、日銀の現状維持や米

ワールド

米中外相会談、ロシア支援に米懸念表明 マイナス要因

ビジネス

米PCE価格指数、3月前月比+0.3%・前年比+2
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 6

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 7

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「性的」批判を一蹴 ローリング・ストーンズMVで妖…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中