最新記事

日本人が知らない 仮想通貨の闇

仮想通貨は「何を持つか」より「どう持つか」、管理法のポイントは?

2018年2月7日(水)16時13分
藤田岳人(本誌記者)

Kim Kyung Hoom-Reuters

<コインチェック事件で浮き彫りになったのは、仮想通貨の管理方法。それでも取引所に任せるか、自力で管理するか。全てを失うリスクもあると認識する必要がある>

「コインチェック事件」で改めて浮き彫りになったのは、自分の大事な資産である仮想通貨をどのように管理するか、投資家自身がしっかり考えて判断しなければならないという当たり前の事実だ。

法定通貨でも、いくら財布に入れて持ち歩くか、いくらをどの銀行に預けるか、いくらを自宅に置いておくかは自分で考える。それぞれに安全性や利便性のメリット・デメリットがあり、自分に合った方法をそれぞれが選択する。仮想通貨もカネである以上、それと同じことだ。

そこで、仮想通貨の保管方法についておさらいしておこう。投資家にとって、保管先の選択肢は大きく分けて3つある。取引所、「ウォレット」のアプリやソフト、ネットから隔離された機器や紙などだ。

1つ目の取引所に置いておく方法だが、最初に日本円を仮想通貨にするには、取引所で入手する必要がある。その後も別の仮想通貨に換える際などには取引所を通す。そのため、そこにそのまま置いておくのは最も「楽」な方法と言える。

ただ、コインチェック事件がまさにそうだが、膨大な資金を抱える取引所は常にハッカーに狙われているとの認識は必要だ。倒産の可能性もある。保管の手間を肩代わりしてもらうのと引き換えに、安全管理の権限も完全に手放すということだ。

取引所を使う際には、数多く存在する国内外の取引所のどこを使うかの選択も重要となる。業者によって取り扱い通貨の種類(ビットコインやそれ以外の仮想通貨)、手数料、最低取引額などが違う。盗難リスクは全ての取引所に共通するが、安全管理や顧客への説明体制などの水準を金融庁が認めた国内の登録業者(現在は16社)を選ぶのが無難だ。

コインチェックは日本の取引所としては最大手の一角。取引スピードの速さやアプリの使いやすさで、ユーザーの評価は高かった。しかし、金融庁による登録をいまだ得られていないのも事実。今回の事件で顧客資産の管理体制が不十分だったことが明らかになったが、それも未登録の一因だったと考えられる。

2つ目は、スマートフォンやパソコンにインストールした「ウォレット」アプリやソフトに、取引所から通貨を移して保管する方法。仮想通貨を財布に入れておくイメージで、外部への送金はスムーズに行える。

ただ、これはネットに接続した状態で保管する「ホットウォレット」なので、取引所任せでなく自力でのセキュリティー対策が必要となる。パソコンなどがウイルス感染すれば、ハッキングで盗難されるリスクがある。また事前に復元の設定をしておかないと、機器を紛失・破損すれば通貨にアクセスできなくなる。


180213cover-150.jpg<ニューズウィーク日本版2月6日発売号(2018年2月13日号)は「日本人が知らない 仮想通貨の闇」特集。コインチェックでのNEM巨額流出騒ぎは氷山の一角。ICO詐欺から、テザー疑惑、量子コンピューターまで、「理想の通貨」になお潜む難題とリスクに迫った。この記事は特集より抜粋>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中