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空き家問題を「壊す」だけで終わらせない...解体から未来につなげる、タミヤホームの挑戦

2025年10月10日(金)11時00分
ニューズウィーク日本版編集部SDGs室 ブランドストーリー
タミヤホームのアスリート経験のある従業員

アスリートのセカンドキャリア支援にも力を入れるタミヤホーム。9割以上の従業員にアスリート経験がある。

<日本を蝕む空き家問題。解体工事を過去の清算と捉えるだけでなく、未来へつながる活動へと昇華させる取り組みを続けている>

日本企業のたとえ小さな取り組みであっても、メディアが広く伝えていけば、共感を生み、新たなアイデアにつながり、社会課題の解決に近づいていく──。そのような発信の場をつくることをミッションに、ニューズウィーク日本版が立ち上げた「SDGsアワード」は今年、3年目を迎えました。私たちは今年も、日本企業によるSDGsの取り組みを積極的に情報発信していきます。

◇ ◇ ◇


全国の空き家数が900万戸を突破し、今や住宅の7戸に1戸が使われないまま残されている。景観の悪化、治安・防災リスクの増大、不動産価値の下落など、空き家が引き起こす問題は日々深刻化している。だがその本質には、単なる建物の老朽化ではなく、所有者の「壊す決断ができない」「相談先がない」という心理的な壁があることも多い。

制度や補助金が整っても、人の想いを受け止める仕組みがなければ、空き家は動かない。そんな現状に対し、解体工事と不動産の力で、課題解決に挑む企業がある。株式会社タミヤホームは、空き家を「壊す」ことで「つなぐ」という、逆転の発想で地域再生に取り組んでいる。

解体の先にある未来を見据え、「空き家」に「想い」と「仕組み」で挑む

タミヤホームは、1997年に埼玉県所沢市で創業し、解体工事を主軸とした事業で成長してきた。木造住宅の解体においては年間1000件を超える実績を持ち、特に老朽化した個人住宅の対応において高い信頼を得ている。だが、同社の本質的な強みは、「空き家問題を本業で解決するパートナー」として進化を遂げた点にある。

転機は2019年。現社長・田宮明彦氏が父から全株式を買い取り、事業を継承した。表面的な代表交代ではなく、経営責任をすべて背負っての「新しい出発」だった。田宮氏は不動産協会の役員として、全国の空き家問題の深刻さと、その構造的課題に強い危機感を持っていた。「未来の子どもたちが、ゴーストタウンで暮らす社会にはしたくない」という信念から、タミヤホームを「解体から始まる再生の事業体」へと舵を切った。

まず着手したのが、業界の常識を覆す「営業と工事の分業化」だ。従来、解体業は作業員が見積もりから近隣対応までを兼務することが多く、顧客とのコミュニケーションに不安があった。タミヤホームでは専門の営業職を配置し、丁寧な対応で顧客の不安や疑問を解消。「解体工事コンシェルジュ」としての役割を確立した。

さらに2023年には、工事の実行段階を担う「解体工事プランナー」制度を導入。業者選定、近隣あいさつ、現場管理などを一貫して行い、顧客の手間を最小限に抑える。この2人1組体制によって、「誰に何を相談すればいいか分からない」という空き家所有者に寄り添う体制を築き上げた。

専属社員が近隣挨拶をしている様子

タミヤホームでは近隣挨拶から書類作成まで全て専属社員が代行する


印象的な事例もある。両親の思い出が詰まった実家を解体すべきか悩んでいた女性に対し、同社は「部分解体」という選択肢を提示した。すべてを壊すのではなく、象徴的な一部を残すという提案は、彼女にとって予想外の解決策だった。「想い出と一緒に新しい生活を始められるとは思わなかった」と語るこの顧客の言葉は、タミヤホームの企業姿勢を象徴している。

2025年には、さらに一歩踏み込んだ事業改革として「不動産ソリューション部」を設立。解体後の土地活用、相続や権利関係が複雑な「訳あり不動産」の整理など、従来の解体業では対応できなかった問題にもワンストップで向き合える体制を整えた。実際、6月には、権利が錯綜した空き家を同社が買い取り、解体と再販売によって関係者全員が納得する着地を実現した。

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