最新記事
SDGsパートナー

生態系にも影響を与える「光害」を低減、アジア初カテゴリーの「星空の世界遺産」認定を可能にしたパナソニックの照明技術

2023年12月6日(水)16時45分
ニューズウィーク日本版編集部SDGs室 ブランドストーリー

照明改修を担ったのは、パナソニック エレクトリックワークス社だ。パナソニックは2020年に国内メーカーとして初めてダークスカイ認証を取得しており、2021年、星空保護区に認定された岡山県井原市(大野市とは別の「ダークスカイ・コミュニティ」カテゴリー)からの協力依頼を機に、光害対策型の道路灯と防犯灯を開発している。

星空保護区認定を受ける照明の条件は、照明器具から上空へ漏れる光(上方光束)が一切なく、光の色合いを示す色温度は3000K以下、温かみのある色であること。パナソニックは地域住民の理解と地元の電気業者の協力を得ながら、エリア内の全ての照明を点検・施工していった。最終的に、防犯灯58台、道路灯36台、その他光害対策照明器具を約260台設置した。

パナソニック製光害対策型の道路灯と防犯灯

光害対策型の道路灯(左)と防犯灯(右)。2021年に星空保護区に認定された岡山県井原市からの協力依頼に端を発してパナソニックが開発した

地域住民が星空保護に関わることが生態系保護にもつながる

自然・文化的な遺産は、実は認定よりも維持していくことが非常に大変だ。「行政だけでなく地域住民が星空保護に関わり、観光客が増えても対応できる組織をつくること。それが星空だけでなく、生態系や地球全体を守っていくことにつながる」と、下川教授は言う。

2024年3月に北陸新幹線の福井~敦賀間開業、2026年春には中部縦貫自動車道の県内全線開通が予定され、新たな高速交通ネットワークの形成が進む福井県。石山志保・大野市長は「星空をはじめとする観光資源を活かして地域経済の活性化につなげていきたい」と展望を語る。

「福井工業大学、パナソニックとの縁や、学校関係者・星空観測団体などの協力がなければここまで来られなかった。地元民にとって星空がきれいなのは日常のことで、その素晴らしさになかなか気付かない。星空保護区申請への取り組みを通じて、大野市の星空は世界に誇っていいんだと再認識できた」

世界に誇れる満天の星空――。近隣に明るい都市がありながらそれが可能になったのは、光害を低減する照明の最新技術があってこそだ。たかが照明、されど照明。持続可能なまちづくりや生態系の保護にもつながる照明である。

そこに人が暮らし、明かりがある限り、光害は起こり得る。国内外のどの地域であっても、この技術は恩恵を与えられるにちがいない。

ニューズウィーク日本版 ISSUES 2026
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月30日/2026年1月6号(12月23日発売)は「ISSUES 2026」特集。トランプの黄昏/中国AIに限界/米なきアジア安全保障/核使用の現実味/米ドルの賞味期限/WHO’S NEXT…2026年の世界を読む恒例の人気特集です

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


ビジネス
「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野紗季子が明かす「愛されるブランド」の作り方
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

歳出最大122.3兆円で最終調整、新規国債は29.

ワールド

マクロスコープ:核融合電力、国内で「売買契約」始ま

ビジネス

三井住友FG、欧州で5500億円融資ファンド 米ベ

ワールド

シリア外相・国防相がプーチン氏と会談、国防や経済協
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これまでで最も希望が持てる」
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 6
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 7
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 8
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中