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2月に増えるメンタル不調「二月病」──仕事熱心な上司ほど危ない理由と防ぎ方

2026年2月3日(火)17時30分
中島 美鈴 (臨床心理士*PRESIDENT Onlineからの転載 )

「先回り」は弊害を生む

しかし、長期的にはマイナスに働きます。なぜなら、田中さんが先回りして介入してしまうことで、以下の2つの弊害が生まれるからです。

1.「最悪の事態は起きない」という学習ができない

常に自分が介入しているため、「自分が介入しなくても、部下はなんとかできるかもしれない」「多少のミスがあっても、リカバリーできるかもしれない」という現実を体験するチャンスが永遠に失われます。その結果、「私がいないと大変なことになる」という誤った信念(認知)が強化され続けます。


2.部下の成長機会を奪う

部下は失敗から学ぶ機会も、自分で考えて成功させる機会も奪われます。結果として部下のスキルは上がらず、田中さんの「部下は頼りない」という不安が、現実のものとなってしまいます。自分の不安への対処が、皮肉にも部下の成長を阻害し、自分の首を絞める悪循環になっているのです。

では、どうすればこの悪循環から抜け出せるのでしょうか。

不安を手放す「実験」

対策としては、不安を恐れずに手放して、結果どうなるかと見極めること(これを行動実験といいます)が有効です。

「行動実験(Behavioral Experiment)」とは、自分の持っている不安や信念(例:「任せたら失敗する」)が正しいかどうかを、実際の行動を通して検証してみる手法です。頭の中で考えているだけでなく、あえて不安な状況に身を置いてみるのです。田中さんは次のような行動実験を計画しました。


【実験の仮説】

田中さんの不安:「細かく指示を出さず、部下に任せたら、締め切りに間に合わず、クオリティも崩壊するだろう」

【実験内容】

「1月半ばの締め切りの資料作成について、あえて途中経過のチェックをしない。期限と目的だけを伝え、最終的なアウトプットが出るまで口出しせずに任せてみる」

これは田中さんにとって、非常に勇気のいることでした。「もし失敗したら......」と考えると、喉の奥が詰まるような不安に襲われます。ついつい「順調?」と声をかけたくなりますが、そこをグッと堪えます。不安に暴露されることを恐れていては、管理職の成長はないからです。

実際に田中さんが勇気を出してこの実験を行ってみたところ、驚くべき結果が待っていました。部下たちは最初こそ「部長、本当にいいんですか?」と戸惑っていましたが、次第に「今回は部長が任せてくれている」「自分たちでやるしかない」と気づき、チーム内で相談を始めました。これまでは田中さんの顔色を伺って停止していた思考が、動き始めたのです。

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