筋トレ、読書、英語...。習慣化により新しい挑戦に成功する「1日1分」で自分を変える方法

2024年6月21日(金)17時23分
名郷根 修(エグゼクティブ・コーチ/株式会社ハイパフォーマンス代表取締役)*東洋経済オンラインからの転載

【小さな成功体験が自己効力感を向上させる】

小さな成功体験は、脳にポジティブな刺激をもたらし、成功体験が自己効力感を向上させることが実験によって示されています。小さなステップから始めることで、成功体験を得やすくなり、自己効力感を強化します。

また、脳は成功や達成感に応じてドーパミンを放出し、これがモチベーションや学習意欲の向上につながります。小さな目標の達成は、脳の報酬系統を活性化させ、自己効力感を高めます。

小さく始めるとストレスも軽減できるメリットがあります。人は大きな課題や目標に直面すると、達成するためのプレッシャーやストレスを感じてしまいます。

たとえば、「腕立て伏せを明日から50回やってください」と言われたら、筋トレ初心者は「ちょっとつらいな」と感じるはずです。ストレスを抱くでしょう。一方、「明日は1回、明後日は2回、明々後日は3回やってください」と言われたら「それならできる」と思うはずです。

小さなステップから始めることで、自分に対するプレッシャーが軽減され、失敗が少なくなります。これにより、心が軽くなり、行動を継続する意欲が向上します。習慣は、繰り返しの積み重ねによって構築されます。小さな目標の達成は、自己効力感を維持する土台となります。

また、大きな目標に一度に取り組むと、失敗が生じた場合に大きな挫折感を抱いたり、自信を喪失したりします。一方、小さなステップで始めた場合、失敗も小さく、ダメージもコントロールしやすくなります。これが積み重なることで、失敗への抵抗力が向上し、自己効力感が損なわれにくくなります。

では、具体的に「小さく始める」にはどうすればいいのか。次の3つのポイントに注意してください。

【「小さく始める」3つのポイント】

1 目標とラフなプランの具体化と実践

習慣化を始める前に定めた目標とラフなプランをもとに、最初の1週間を小さなステップに分割します。たとえば、習慣化の目標が「腹筋50回」であれば、「1日1回」からでも全く問題ありません。

「毎日運動する」が目標ならば「1日1分」で軽いストレッチや簡単なエクササイズくらいでもいいでしょう。「月に1冊本を読む」が目標であれば、「1日2ページを読む」でもいいです。「こんなに簡単でいいの」と思うくらい小さく分割していいのです。むしろ、あなたが簡単に思えたらそれは適切なステップです。

ここで重要なのは、初めの段階では行動が簡単でアクセスも容易であることです。「毎日運動する」が目標の場合、移動したり、道具が必要だったりすると長続きしません。

また設定するステップは自分でコントロールできるものにしましょう。たとえば最終目標を1年後にTOEICの点数を200点上げることにしたとしても、点数は自分で完全にコントロールすることはできません。

ただ、「毎日10分勉強する」「毎日2ページ問題集を解く」でしたら自分で頑張ればできます。自分が行動することで完結するステップにしましょう。行動することで達成できるステップを設けることで自己効力感の低下を避けられます。

余談ですが、私は会社を経営していますが業績管理評価のための重要な指標(KPI)には行動習慣の指標を入れるようにしています。売り上げをいくら目指すという目標は必要ですが、それだけだと経済環境など個人ではどうしようもない要因にも左右されます。頑張ってもどうしようもないときもあります。

ですから、「お客様を○回訪問する」のように習慣化できる行動指標も盛り込むことで自己効力感を高く維持でき、挑戦し続けられる体制を整えています。

2 習慣化のタイミングを確立

小さなステップを習慣にするためには、固定されたタイミングを設定することが効果的です。たとえば「毎朝6時半から散歩を10分する」のような形で毎日の生活に組み込んでしまうことで、脳がその行動を習慣として認識しやすくなります。

行動の前後にポジティブな言葉がけを自分に行うのも効果的です。自分に対して「小さなことでもいいからやってみよう」「よくできた」といった肯定的なメッセージを送ることで、自己効力感を高められます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

アングル:解体される「ほぼ新品」の航空機、エンジン

ワールド

アングル:汎用半導体、供給不足で価格高騰 AI向け

ワールド

米中間選挙、生活費対策を最も重視が4割 ロイター/

ワールド

ロシア凍結資産、ウクライナ支援に早急に利用=有志連
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...装いの「ある点」めぐってネット騒然
  • 2
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 3
    「宇宙人の乗り物」が太陽系内に...? Xデーは10月29日、ハーバード大教授「休暇はXデーの前に」
  • 4
    為替は先が読みにくい?「ドル以外」に目を向けると…
  • 5
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 6
    ハーバードで白熱する楽天の社内公用語英語化をめぐ…
  • 7
    「ママ、ママ...」泣き叫ぶ子供たち、ウクライナの幼…
  • 8
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 9
    【ムカつく、落ち込む】感情に振り回されず、気楽に…
  • 10
    「信じられない...」レストランで泣いている女性の元…
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 3
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 4
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 5
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 6
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 9
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 10
    「ママ、ママ...」泣き叫ぶ子供たち、ウクライナの幼…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中