最新記事
健康

「市販薬より効果のある健康食材」現役医師が伝授する風邪の予防法・対処法

2024年3月8日(金)11時13分
名取 宏(内科医) *PRESIDENT Onlineからの転載
じつは市販薬より効果的…風邪で咳がひどいとき、一口飲むだけで楽になるスーパーで買える身近な食材

<季節の変わり目に、風邪が流行っている。風邪には風邪薬、葛根湯?それともビタミンC? 内科医の名取宏さんによれば、自然治癒しかないが予防法と対処法はある>

風邪が猛威を振るっている。できればかかりたくない、かかったとしても悪化させたくないと誰しも思うだろう。内科医の名取宏さんは「風邪は自然治癒しかないが、予防法と対処法はあるので知っておいてほしい」という――。

手洗いはコスパがいい予防法

風邪をひいたことのない人は、ほぼいないでしょう。日常的にもっともよく知られている病気ですが、一方で「風邪とは何か」をきちんと説明するのは案外難しいのです。よくある説明は「風邪とは、のどの痛み、咳、鼻水といった症状を引き起こす、上気道に限局した急性炎症の総称」といったところでしょう。

風邪予防といえば、まず手洗いが思い浮かぶと思います。風邪の原因となるウイルスや細菌は、咳やくしゃみで飛び散った飛沫ひまつだけではなく、手を介しても感染するからです。

たとえば、風邪をひいている人がくしゃみをするときに手で覆うと、手にウイルスが付着します。その手でドアノブや手すりといった環境表面を触るとウイルスで汚染されることに。同じ部分を別の人が触り、その手で目や鼻の粘膜に触るとそこからウイルスが感染します。

手が汚染されている可能性のあるときは、目や鼻を触らないほうがいいでしょう。

手洗いは費用があまりかかりませんし、害もほとんどありません。その上、呼吸器感染するウイルスだけではなく、胃腸炎といった消化器関連の感染症も予防できます。

ぜひこまめに丁寧に洗ってください。

うがいとマスクの予防効果

また、うがいが風邪を予防することも、日本発の研究で示されています(※1)。

18歳から65歳までの健康な人387人をランダムに、【水うがいを行う群】【ポビドンヨードうがいを行う群】【うがいを行わない対照群】の3つに分け、60日間の上気道感染症(風邪とほぼ同じ意味です)の発症数を比較したところ、水うがい群では上気道感染症の発症が4割減少したのです。

興味深いのは、殺菌作用のあるポビドンヨードうがい(代表的な商品名はイソジン)を使った群は、うがいを行わない対照群と差がなかったことです。

殺菌成分が正常な細菌叢や粘膜に悪影響を及ぼす可能性が指摘されています。風邪を予防したいのであれば、ポビドンヨードを使わず、普通の水でうがいをしましょう。

マスクの予防効果は、他の人からマスク着用者への感染と、マスク着用者から他の人への感染を区別して考えます。

日常的に使われている不織布マスクや布マスクは、他人からマスク着用者への感染を予防できるかどうかは不明確です。新型コロナ以前にも以後にもいくつかの研究がありますが結果は一貫していません。

一方、風邪症状のあるマスク着用者から他の人への感染は抑制すると考えられており、いわゆる「咳エチケット」として新型コロナ流行前から推奨されてきました。

新型コロナ以降は、無症状の人を含む多くの人がマスクを着用する「ユニバーサルマスキング」がコミュニティにおける感染拡大を抑制させるエビデンスも出てきています(※2)。

流行時には無症状感染者の数も増えますので、マスク着用の効果が観察できるようになるのでしょう。普通の風邪のウイルスの感染経路も新型コロナウイルスと似ていますので、他者への感染予防効果はあると思われます。

ただし息苦しかったり、表情が見えなかったりという不利益もあります。流行時や医療機関内でなければ、マスクを着用するかどうか個人の判断で決めてよいと思います。

※1 Prevention of upper respiratory tract infections by gargling: a randomized trial
※2 Lifting Universal Masking in Schools - Covid-19 Incidence among Students and Staff

編集部よりお知らせ
ニュースの「その先」を、あなたに...ニューズウィーク日本版、noteで定期購読を開始
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イスラエル、ガザ地区最大都市ガザ市に地上侵攻 国防

ワールド

米、自動車部品に対する新たな関税検討へ 国家安保上

ビジネス

米8月小売売上高0.6%増、3カ月連続増で予想上回

ビジネス

米8月製造業生産0.2%上昇、予想上回る 自動車・
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 2
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがまさかの「お仕置き」!
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 7
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 8
    「なにこれ...」数カ月ぶりに帰宅した女性、本棚に出…
  • 9
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中