最新記事
自己啓発

バカに悩まされ説教しようとするあなたもバカ「価値観の違う相手に方言で話すようなもの」

2023年5月8日(月)18時00分
マクシム・ロヴェール(作家、哲学者) *PRESIDENT Onlineからの転載

逆に説教をしてくるバカ

実際、弁が立つ相手の場合、今度は向こうが意気揚々と説教をしてやり返してきます(残念ながら、たいていのバカは弁が立ちます)。

みなさんは、たとえば善と悪の違いをわかりたいと思っていたり、人のふるまいを場にふさわしいものにする望ましい方法があることを知っていたりと、道徳に関心が高いかもしれません。

しかし、たとえそうであっても、この場合、道徳を平然と無視しているのは向こうなので、そんなバカに道徳を説かれるいわれはありません。

さらに悪いのは、価値体系が違うバカを相手にしたときでしょう。

本物のバカな人たち(今わたしたちの友達ではなく、これからも決して友達になることのない人たち)は、わたしたちとは違う価値体系をもっていて、その価値体系では、わたしたちが許せないとみなすふるまいが完全に正しいと思われ、逆にこちらのふるまいが間違っていると思われる、などということが起こるのです。

価値体系をもたないバカ

さて、この本では、さまざまな真実を明らかにしていかなければなりませんが、今から書くことは、その中でも、一番認めがたく、一番奥が深く、一番耐えがたい真実かもしれません。

まず、人がバカになるときは、自分の意志でなるのではなく、たまたま間違えたとか、何かが及ばなくてとか、逆に何かが行きすぎてとか、その場の状況で仕方なく、というパターンもありますが、それとは別に、価値体系をもたないバカがいるのです。

こうした真実を明るみに出さなければならないのは残念ですが、わたしたちみんながこのことで苦しんでいるからには、物事を正面から見すえたほうがいいでしょう。

人類を豊かにするような身体的、言語的、文化的差異を、一般に「他者性」という言葉で呼びますが、この言葉が指すものはそれだけではありません。

「他者性」は、あらゆる社会と社会階層に、一貫性がなくても気にしない人が存在する、ということも意味します(しかも、単独に存在するのではなく、同調する仲間もいます)。

そうした人たちは、わたしたちと違う価値体系をもつのではなく(違う価値体系をもっているなら、その価値体系自体は興味深いです)、何の価値体系ももたないことに価値を見いだしていて、要するに、全く支離滅裂なのです。

そうしたバカをここでは「価値体系をもたないバカ」と呼ぶことにしますが、もしみなさんがそうしたバカの存在を疑っていらっしゃるなら(わたしもついこの前までなら疑ったでしょうけれども)、どんなバカなのか、ご紹介しましょう。

「価値体系をもたないバカ」は、うっかりタイプではありません。常軌を逸していることもありません。意地悪でもありません。しかも仕事では優秀です(本物のバカがまぬけなことはまれです)。

たとえるなら、輝かしい、本物のダイヤです。それも、今までわたしが近寄る機会があった中では一番純度の高いダイヤです。

この人たちは、理解する能力はありますが、理解しようという気がありません。別の言い方をすれば、自分のバカさに、勇ましくしがみついているのです。

ビジネス
「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野紗季子が明かす「愛されるブランド」の作り方
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

EU・仏・独が米国非難、元欧州委員らへのビザ発給禁

ワールド

ウクライナ和平の米提案をプーチン氏に説明、近く立場

ワールド

パキスタン国際航空、地元企業連合が落札 来年4月か

ビジネス

中国、外資優遇の対象拡大 先進製造業やハイテクなど
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 2
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 3
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これまでで最も希望が持てる」
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 6
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 7
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 8
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 9
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 10
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 9
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中