最新記事
動物

少女は熊に9年間拉致され、人間性を失った...... 「人さらい熊」の目的とは?

2023年3月17日(金)14時30分
中山茂大(ノンフィクション作家・人力社代表) *PRESIDENT Onlineからの転載

熊が子供をつれて、抱いて寝たらしい形跡

ところが翌日の午後3時頃、村人が山林を通行中、子どもの泣き声を耳にする。不思議に思って草むらに分け入って百間ほど進むと、「顔面虫にさされて血にまみれ虫の息となっているミツ」を発見。

その2間先に大きな熊がうずくまっているのを見つけて仰天し、村人はミツを抱え一目散に逃げ出した。ヒグマも驚いたのか、山中深く逃げ込んでしまったという。

『幌加内町史』によれば、「その場所をよく調べてみたところ熊の足跡が一面についており、熊が子供をつれて、抱いて寝たらしい形跡がありありとのこっていた」という。

このヒグマが女児と一緒にいたことは間違いないらしい。当時この事件は大衆誌『キング』にも掲載されて評判になったという。(大正13年9月2日付「小樽新聞」をもとに作成)

むしろ赤ん坊を助けようとした

ほかにも、次のような事件が報告されている。

ある日、二ッ岩というところで女性が畑仕事をしていた。そこに子供の泣き声が聞こえ、驚いて行ってみると、熊が女性の子どもをさらっていくところだった。

母親は驚いたが、死に物狂いで熊の後を追い、崖を登って熊に追い付いた。

熊は女性の執念に圧倒されたのか、子供を放し、山林の中に姿を消した。子供にはカスリ傷ひとつなかったという。(『北の語り 第二号』北海道口承文芸研究会の「羆見聞記 網走在住 小笠原勇氏」をもとに作成)

このヒグマも、赤ん坊に危害を加えるつもりではなかったらしい。むしろ、放置されている赤ん坊を助けようとしたようにも見える。

子どもを育てようとしたヒグマ?

次の悲しい事件も、もしかすると「人さらい熊」によるものかもしれない。

大正14年8月13日、北海道の勇払(ゆうふつ)郡厚真(あつま)村の中山長蔵の二男清治(6)は、兄(11)、隣家の遊び友達(11)と3人で、マッチ工場付近の小川で遊んでいた。

午後4時頃、急に清治がいなくなったので、兄と友達が急いで帰宅し、大人たちを呼んだ。消防組青年団員などが総出で三日三晩不眠不休で付近を捜索したが、清治は見つからなかった。

「大蛇に呑まれたのではなかろうか」とか、「頭は赤く首から下肢は真っ黒な老狐に連れて行かれたのだ」などと、さまざまな噂が立った。

事件発生から12日後の8月25日、炭焼き人夫が、事件現場から1里(4キロ)も離れた山中で幼児の死体を発見した。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

透析・手術用の品目、「安定供給図る体制立ち上げた」

ワールド

トランプ氏、NATOへの関与に否定的発言 集団防衛

ワールド

北朝鮮が固体燃料エンジンの地上燃焼実験、金総書記が

ワールド

ウクライナ大統領がUAE・カタール訪問、防衛協力で
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 2
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度を決める重要な要素とは?
  • 3
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のSNS動画が拡散、動物園で一体何が?
  • 4
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 5
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 6
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反…
  • 7
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 8
    ヒドラのように生き延びる...イランを支配する「革命…
  • 9
    ビートルズ解散後の波乱...「70年代のポール・マッカ…
  • 10
    ウィリアム皇太子が軍服姿で部隊訪問...「前線任務」…
  • 1
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 2
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 3
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店員も「なすすべなし」の暴走モード
  • 4
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」…
  • 5
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が…
  • 6
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 7
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 8
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 9
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 10
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中