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勉強する子もしない子も「スマホを触るとバカになる」は本当 7万人調査で判明「スマホと学力」の関係

2022年12月20日(火)16時30分
川島隆太(東北大学加齢医学研究所 所長/脳科学者) *PRESIDENT Onlineからの転載

次にわかるのは、「携帯・スマホを使う時間が長ければ長いほど成績が悪い」という事実です。グラフの右にいくほど(使用時間が長いほど)、棒グラフが3本とも(ということは家での勉強時間とは関係なく)低くなっています。

さらに、6本ある白い棒グラフで低いものと、同じく黒い棒グラフで高いものの高さを比べると、こんなことがわかります。

「家で2時間以上勉強しても、携帯・スマホを3時間以上使ってしまう」生徒より、「家でほとんど勉強しないが(30分未満)、携帯・スマホを使わない」生徒のほうが「成績がよい」という事実です。家で2時間以上も勉強をしたのに、その努力が全部ムダになってしまっているかのようです。

携帯・スマホの使用時間が1時間未満ならば、家でほとんど勉強しなくても、やっぱり3時間以上使う生徒より成績がよくなっているのです。

携帯・スマホを長時間使う子どもの学力が低いと聞けば、多くの人は「家で勉強せずに携帯・スマホをいじっているのだから当然だ」と思います。

ところが、家で勉強する生徒もしない生徒も、携帯・スマホを長時間使用すると成績が低下しているのです。だから、直接の原因が家庭学習時間の減少である可能性は低い、と考えられます。

最悪の仮説......スマホを使うだけで脳に悪影響が生じる

とくに深刻なのは、家でほとんど勉強をしない生徒たちのデータです。彼らは学校でしか勉強しませんから、学校の授業で得た知識や記憶によってテストに臨んでいます。

それで数学の試験を受けたら、携帯・スマホを使わない生徒が平均約62点でした(左端の黒い棒グラフ)。ところが、携帯・スマホを1時間以上使うと、使用時間が長いほど成績が低下し、4時間以上使う生徒では15点も低くなっています(右端の黒い棒グラフ)。

携帯・スマホを4時間以上使う生徒は、家で2時間以上とかなり勉強して知識も記憶も増えているはずなのに、家での勉強時間が30分~2時間の生徒と成績が変わらないのです(右端の白とグレーが同じ高さ)。

しかも「家でほとんど勉強せず(30分未満)、携帯・スマホの使用時間が2時間未満の生徒」より成績が低いのです。

ということは、自宅学習のぶんはおろか、学校で学んだことまでも相殺されてしまっているかもしれないということなのです。これは深刻な事態です。

この結果から想定される"最悪"の仮説は、携帯・スマホの長時間使用によって、学校での学習に悪影響を及ぼす何かが、生徒の「脳」に生じたのではないか、というものでした。

可能性①は、学校の授業で脳の中に入ったはずの学習の記憶が、消えてしまった。可能性②は、脳の学習機能に何らかの異常をきたし、学校での学習がうまく成立しなかった。当時は、あくまで仮説であり可能性でしたが、ただ事でないことは間違いありませんでした。

7万人超の小中学生を追跡調査で分かったこと

ただし、急(せ)いては事をし損じます。結論を出すには、まだ早すぎました。じつは当時の調査には、いくつか問題点があったのです。お読みになって、この点はどうなっているのだろう、と疑問を感じた読者もおられるでしょう。以下に整理しておきます。


① 「携帯・スマホ」として調査やデータ解析をおこない、この2つを区別していません。当時は、スマホの子どもたちへの普及があまり進んでいませんでした。
② 携帯・スマホで「ゲームもしている」ことを、調査の前提とすべきでした。当時は、ゲームはもっぱらゲーム機で楽しむものと考えていたのです。
③ 単年度の調査だけでは、携帯・スマホを使ったから学力が低下したのか、学力の低い生徒が携帯・スマホを長時間使う傾向があるのか、区別できません。相関関係は明らかでも、因果関係がはっきりしないわけです。
④ 睡眠の影響をとらえきれていませんでした。教育の世界では、睡眠時間の短い子どもたちの学力が低いことは"常識"になっていました。

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