最新記事

医療

高知県民は静岡県民の2倍入院費を払っている 「不必要な医療」が日本の医療費を高騰させる

2022年12月10日(土)11時20分
森田洋之(医師/南日本ヘルスリサーチラボ代表) *PRESIDENT Onlineからの転載

高知県民は静岡県民の2倍入院している

図表3をご覧ください。横軸が人口10万人あたりの病床数、縦軸が1人あたりの入院医療費です。

図表3 入院医療費(年齢調整後)と病床数の関係

入院医療費とは、入院した人に対して発生した医療費のことです。

それを、入院している人もしていない人も含め、その都道府県の全人口で割った額が「1人あたりの入院医療費」です。

こちらも高齢化率等を調整した後の数字になっています(高齢者が多い地方のほうが都市部より医療費が高くなるのは仕方がありませんが、そういう影響を調整した後の数字だということです)。

平均寿命全国トップクラスの長野県は病床が少ない

私はこのデータを見たとき、愕然としました。医師を続ける気が失せるほどの衝撃を受けたのです。

高知県民は1年間に34万円を使っているのに対して、最も低い静岡県は19万円しか使っていません。

医療費が2倍近いということは、つまり高知県民は静岡県民より2倍近く入院しているということです。

入院回数が2倍なのか、入院日数が2倍なのかはわかりませんが、現実として高知県民は入院費に静岡県民の2倍のお金を使っているのです。

さらに、高知県は人口10万人あたり2522の病床を持っているのに対して、神奈川県は810床。つまり高知県は神奈川県の3倍、病床を持っています。

まず、それ自体がそもそもおかしなことです。高知県民が神奈川県民の3倍多く病気になっている、あるいは病気になりやすいわけではないからです。

事実、平均寿命が全国トップクラスの長野県は、病床はむしろ少ないほうです。

病床数が多いほど一人あたり医療費も高い

なぜ、同じ医療保険・医療システムなのに、都道府県によって1人あたりの医療費がこれほど違うのでしょうか。

どの都道府県民も病気になる割合に大きな違いはないはずです。

同じ日本人なら、がんになる確率も、心疾患になる確率も大差ないでしょう。

ですから、このグラフは本来ならほぼ横一直線になっていないとおかしいわけです。

また、そもそも都道府県により病床の多い、少ないがあるのもおかしな話ですので、そう考えれば横一直線ではなく、各点が真ん中一点に集約されているべきです。

このグラフから見えてくるのは、病床数が多い都道府県ほど一人あたりの医療費もかかっている、という事実です。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

イラン、イスラエルへの報復ないと示唆 戦火の拡大回

ワールド

「イスラエルとの関連証明されず」とイラン外相、19

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、5週間ぶりに増加=ベー

ビジネス

日銀の利上げ、慎重に進めるべき=IMF日本担当
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 4

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 5

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 8

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    ネット時代の子供の間で広がっている「ポップコーン…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中