最新記事

家族

「目が見えるうちに、美しい記憶で満たしてあげたい」家族で分かち合う世界旅行へ

Taking Them Around the World

2022年11月18日(金)14時25分
イーディス・ルメイ(カナダ・モントリオールの4人の母)
世界旅行

ルメイ(右から2人目)と夫は仕事を辞め、子供たちと旅に出た EDITH LEMAY

<4人の子のうち、3人が網膜色素変性症と診断される。両親は仕事をやめて、子供たちと家族全員で世界一周旅行へ。状況を受け入れ、前を向いて生きていくとは?>

娘のミアの視力に問題があると気付いたのは3歳の頃。夜中に起きると、家具や壁にぶつかる。薄暗い所で物を渡しても、それが見えない。

検査を受けても結果は陰性で、何の病気か分からない。網膜色素変性症という診断が出たのは4年後だった。

私たちには現在11歳のミア、レオ(9)、コリン(7)、ローラン(5)の4人の子供がいるが、ミア、コリン、ローランの3人がこの病気だ。

網膜色素変性症は網膜の細胞が徐々に壊死する病気なので、3人は徐々に視野が狭くなり、視力を失っていく。日中の視力は問題ないが、薄暗くなるとほとんど見えない。

私たちの最初の反応は、不信感とショックだった。最初は信じられず、怒りが込み上げ、解決策を求めて走り回り、そして悲しみに打ちひしがれた。でも、最後は現実を受け入れるしかない。受け入れて初めて前に進むことができる。

専門家はできるだけ多くの画像を覚えさせ、視覚的記憶を満たしてやることが一番だと言った。例えば本の中の象やキリンを見せて、視力を失った後もその姿を思い浮かべられるようにするとか......。

それを聞いてピンときた。本物の象やキリンを見せてやろう。そうすれば絶対に忘れないはず。夫のセバスチャンと私は仕事を辞め、子供たちと世界を旅することにした。子供たちの視覚的記憶をできるだけ多くの美しいもので満たしてやりたいと思った。

前を向くことが大切

出発の予定は2020年7月だったが、パンデミックのせいで断念。それから2年間はひたすら待った。最終的にどの国が入国可能かを調べ、ナミビアまでの航空券を予約して、今年3月に旅程を決めないまま旅立った。

ナミビアからザンビア、タンザニアへ陸路で移動。7月はトルコに1カ月滞在して、モンゴルで6週間過ごしてからインドネシアのバリ島に飛び、今もインドネシア国内にいる。

ここに2カ月ほど滞在したら、しばらくマレーシアに行き、タイ、ベトナム、ラオス、カンボジアに足を延ばすつもりだ。ただし、正確な日程はまだ決めていない。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

金総書記、プーチン氏に新年メッセージ 朝ロ同盟を称

ワールド

タイとカンボジアが停戦で合意、72時間 紛争再燃に

ワールド

アングル:求人詐欺で戦場へ、ロシアの戦争に駆り出さ

ワールド

ロシアがキーウを大規模攻撃=ウクライナ当局
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 3
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌や電池の検査、石油探索、セキュリティゲートなど応用範囲は広大
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 6
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 7
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 8
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 9
    【クイズ】世界で最も1人当たりの「ワイン消費量」が…
  • 10
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 5
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中