最新記事
日本社会

若者の「恋愛離れ、セックス離れ」はウソ 内閣府「20代の4割がデート経験なし」の本当の意味

2022年7月4日(月)13時30分
荒川和久(コラムニスト・独身研究家) *PRESIDENT Onlineからの転載

それはともかく、大人たちはとかく自分たちの若い時のことはすっかり忘れて「若者の恋愛離れ」「若者のセックス離れ」などと騒ぎ立てます。お決まりの「イマドキの若いモンは......」と結びつけて納得したがるのは、古代のエジプト文明時代の壁画にも書いてあったように繰り返されるお話です。

しかし、冷静にデータを見れば、「若者の○○離れ」と言われるものの大抵は、事実に反する偏見と誤解による思い込みであることが分かります。

若者の草食化としてよく引き合いに出される「若者のセックス離れ」についても同様です。国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の出生動向基本調査に基づき、1987年からの未婚男女の性体験無し率(年齢別)の推移をグラフにしてみました。

未婚男女年齢別「性体験無し」率の推移

「25歳まで性体験なし」男性はずっと童貞のまま?

これを見ると、どうやら男女とも2005年に若者の性体験率がピークを迎え、その後、各年代揃って減少しているように見えます。「若者のセックス離れ」と言いたい人たちは、この2005年を始点とした推移だけを切り取って「ほら、こんなにも減っている」と主張するわけですが、もっと俯瞰してみれば、違う景色が見えてきます。それ以前の90年代、80年代までさかのぼれば、むしろ2005年の数字のほうが異常値であって、現在は通常の状態に戻りつつあると解釈するのが妥当ではないかと思います。

むしろ着目すべきは、25歳以上の男性の童貞率の推移です。1987年から2015年まで童貞率はほぼ20~30%の割合で一定で変わっていないことです。これは、つまり、25歳まで童貞だった男性は、その後もそのまま童貞であり続ける可能性が高いということです。これは、「恋愛強者3割の法則」と対照的に、いつの時代も「恋愛最弱者3割の法則」とでも言えるでしょう。

バブル期→2005年にかけ「処女率が半減」の謎

一方、女性を見ると、1987年、バブル真っ最中での20~24歳女性の64%以上が処女だったのに対して、2005年には処女率36%とほぼ半減に近い状態になった変化が際立っています。

80年代後半から2005年までの間に、一体何があったのでしょう。1980年代中ごろ、バブルの好景気という日本全体を覆い尽くした熱気を反映したように、平成の恋愛至上主義と呼ばれる時代が到来しました。

クリスマスイブはカップルがデートするという文化は実はその頃に誕生したものです。高級レストランで食事を、半年前からシティホテルを予約し、男性は高価なプレゼントを贈るものというデートフォーマットを完成させたのは、雑誌『an・an』(アン・アン)だと言われています。90年代のテレビドラマは、「東京ラブストーリー」「101回目のプロポーズ」「ロングバケーション」等、恋愛系ドラマが次々と大ヒットしました。

もうひとつ若者の恋愛に必須なツールがこの頃一般化しました。携帯電話です。特に親元に住む学生など若い男女にとって、親の目を気にすることなく、相手と長電話できる携帯電話は若者の行動を大きく活発化させました。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ネットフリックス、ワーナー資産買収で合意 720億

ビジネス

アップル、新たなサイバー脅威を警告 84カ国のユー

ワールド

イスラエル内閣、26年度予算案承認 国防費は紛争前

ワールド

EU、Xに1.4億ドル制裁金 デジタル法違反
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い国」はどこ?
  • 2
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開きコーデ」にネット騒然
  • 3
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...ジャスティン・ビーバー、ゴルフ場での「問題行為」が物議
  • 4
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 5
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 8
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 9
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 10
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 1
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 2
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 5
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 6
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 7
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 8
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 9
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 10
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中