最新記事

0歳からの教育

育児で赤ちゃんにイライラしたときにこそ、やるべきこと

Magic Touch

2022年2月4日(金)18時40分
岡田光津子(ライター)
パパが赤ちゃんを抱っこ

正しい抱っこで赤ちゃんも親も快適に。触れ合いによって親の愛情ホルモンも増加する AZMANL/ISTOCK

<触れ合いは赤ちゃんの愛着を形成するだけではない。抱っこの驚くべき効果とは? 1日3時間抱っこした男性は......>

親子の愛情日本一を目指す──そう宣言をして、静岡県掛川市は桜美林大学リベラルアーツ学群の山口創教授と共同研究を実施した。

2017年度から3年計画で検証したのは、スキンシップの成果。その1つにこんな結果がある。

掛川市内で2つの保育園を選び、一方では家庭と園で3カ月間スキンシップなどの触れ合いを増やした。もう一方では、これまでどおりの活動をした。

3カ月後、前者の園の子供は「愛情ホルモン」と呼ばれるオキシトシンが増加し、先生や親との愛着が強くなり、子供の社会性が伸び、積極的に子供同士で遊ぶようになった。

「これは相手との特別なつながりである愛着が安定しているからできること。3カ月でも家庭と保育園でスキンシップを増やすことで、子供たちが変わることが分かった」と山口は言う。

このときの生理学的メカニズムは、子供の脳でオキシトシンが分泌され、相手を信頼したり親密な関係を築いたりできるようになっていく。こうした触れ合いで保護者の脳でもオキシトシンが出るため、互いの絆が深まる。

「触れ合いの一番の作用は、こうした愛着の形成だと言える」と山口は言う。

では、まだ言語を持たない赤ちゃんは、スキンシップを受けることをどう感じているのだろう。

長崎大学大学院医歯薬学総合研究科の篠原一之教授は、この部分を脳活動測定(近赤外分光法)で明らかにした。

優しく皮膚をなでる「アフェクティブタッチ」を大人の手に行うと、脳の報酬系が活性化する。報酬系とは、欲求が満たされたときや満たされると分かったときに活性化し、幸福感などを引き起こす脳内のシステムのことだ。

「赤ちゃんの手に触れると、大人と同じ脳の活動が見られたので、赤ちゃんも同じように心地よく感じていることが分かった」と篠原は語る。

おむつのメーカーとしても知られるユニ・チャームの共生社会研究所との共同研究からは「赤ちゃんはお尻、おなか、背中に優しく触れられることでも同じ反応を示すことが明らかになった」と言う。

また赤ちゃんへタッチケアを行うと、10人中10人の母親のストレスホルモンが減少することも分かっている。

「慣れない育児のなかで、イライラして子供をかわいく思えないときもあるだろう。そんなときはタッチケアのマニュアルを参考にわが子に数分だけ触れてみる。それだけで、イライラの解消になるはずだ」と篠原は言う。

【話題の記事】
親の「赤ちゃん言葉」は幼児期の言語習得に影響する
遺伝か、生活習慣か、訓練か、子どもの運動能力を決めるのは?

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

大和証G、26年度までの年間配当下限を44円に設定

ワールド

北朝鮮、東岸沖へ弾道ミサイル発射=韓国軍

ワールド

ロシア、対西側外交は危機管理モード─外務次官=タス

ビジネス

中国4月経済指標、鉱工業生産が予想以上に加速 小売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 4

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇…

  • 5

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 6

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 7

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃の…

  • 8

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 9

    日鉄のUSスチール買収、米が承認の可能性「ゼロ」─…

  • 10

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中