なぜ自由を叫ぶ者が奴隷を飼った? アメリカの原罪と高貴な理想の衝突を描くドキュメンタリー
The Story of US
歴史の複雑さを見つめて
その一方で、今のアメリカが独立戦争以来経験したことのないほど分断されているという通説は信じていない。これまでと違うのは「情報源」の激増であり、それが国民の注意力を乱し、結束を分裂させているという。アメリカのように雑多な民族・地域で構成されている大国を団結させるには事実の共有が必要だが、そうした共通の現実が欠けているせいで、今という時代が「生きづらく」感じられるのだという。
この効率重視の時代に、1回で終わらない歴史ドキュメンタリーシリーズの市場はまだ存在するのか。
35年前の『南北戦争』の放映開始当初でさえ、MTVのノンストップのミュージックビデオに対抗できるのかと疑問視されたと、バーンズは指摘する。今のTikTok(ティックトック)やYouTubeやネットフリックスにしても、自分の娘たちや孫たちは週末に20時間くらい見ているから、それに比べれば12時間くらい平気だろうというのがバーンズの見立てだ。「全ての意味は時間をかけて生まれるが、私たちは手っ取り早い効果に注目し、重厚なものを見ようとしない」
映画の後半で、バーンズはベンジャミン・フランクリンのものとされる有名な言葉を、それを促した女性の視点から描く。その女性とはエリザベス・ウィリング・パウエル。フィラデルフィアの社交界で影響力があった富裕層の女性で、このシリーズが光を当てている、歴史から消されたも同然の多くの人々の1人だ。





