「ジョン・レノン」を名乗った男 ――暗殺犯マーク・チャップマンの心に起きていたこと

Lennon’s Alter Ego

2025年12月26日(金)11時16分
トム・マシューズ(本誌記者)、パメラ・エイブラムソン(ホノルル)、ホリー・モリス(アトランタ)、フランク・マイヤー(シカゴ)

そして木や革でできた十字架を首にかけ、学校の休み時間にも聖書を読んでいた。かつてレノンが「ビートルズはイエス・キリストよりも人気がある」と発言したことに憤慨し、「イエス様と自分らを比べるなんて、あいつら何様のつもりだと言っていた」と証言した友人もいる。

とりわけ嫌っていたのはレノンの代表曲「イマジン」だったらしい。同じ聖書研究会にいたある女子生徒が地元紙に肩を震わせて語ったところでは、「当時は『イマジン、もしもジョン・レノンが死んだなら』というジョークがはやっていた」。


この不気味な冗談から人生が狂い始めた。一旦はコミュニティ・カレッジに入ったが、すぐに退学。次はYMCAのキャンプ指導員となり、しばらくは子供たちの面倒を見るまっとうな生活を送った。それから同僚に誘われて75年6月にレバノンへ渡ったが、現地は内戦の真っ最中で、すぐに帰国を強いられた。彼にとっては大きな挫折だった。

それからチャップマンはアーカンソー州にあるYMCAのベトナム難民施設で働くことになったが、その頃チャップマンの心中に芽生えた危険な衝動には誰も気付かなかったようだ。当時の同僚デビッド・ムーアによれば、チャップマンは敬虔なキリスト教徒で休みも取らずに働き、いたずらに銃を持ち歩く人たちに嫌悪感を示していた。

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