「ジョン・レノン」を名乗った男 ――暗殺犯マーク・チャップマンの心に起きていたこと

Lennon’s Alter Ego

2025年12月26日(金)11時16分
トム・マシューズ(本誌記者)、パメラ・エイブラムソン(ホノルル)、ホリー・モリス(アトランタ)、フランク・マイヤー(シカゴ)

見過ごされた崩壊の兆候

それからチャップマンは悲しい失恋を経験し、アトランタに戻って職業訓練校に通い、警備員の資格を得た。必修科目の射撃では、合格に必要な60点を大きく上回る88点を記録していた。その後はしばらくアトランタ周辺で警備員として働いたが、77年にハワイへ飛んだ。そしてそこで、再び何かが変わった。

最初は病院で清掃業務に就き、次は印刷工場の見習いになった。しかし79年にはホノルルでベーカリーを営む裕福な日系人の娘グローリア・アベと結婚し、市内にある家賃425ドルのアパートに引っ越した。当時の友人によれば、グローリアは「妻に心の内を探られたくない男が選ぶタイプの女性」だったらしい。


それでも当時のチャップマンは単なる変人で、危険人物と思われてはいなかった。奇才サルバドール・ダリの作品に引かれ、妻の実家などから借金して5000ドルもする版画を買ったこともある。暗殺された元大統領エイブラハム・リンカーンの、顔をぼかした肖像画だった。

その後は病院の仕事を辞め、なぜかもっと給料の安い警備員になり、次いでワイキキのギャラリー街に近いコンドミニアムの施設管理人の仕事に就いた。そこでは胸に着ける名札にマスキングテープを貼り、別の名前を書きなぐっていた。「ジョン・レノン」と。

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