最新記事
俳優

「私の何が、人を引き付けるのか?」 アル・パチーノが自伝『サニー・ボーイ』でさらけ出した本心

One of Cinema’s Greatest

2024年12月14日(土)11時16分
イモジェン・ウェストナイツ(作家、ジャーナリスト)
アル・パチーノの自伝『サニー・ボーイ』

1972年パチーノはマーロン・ブランド(右)と共演した『ゴッドファーザー』でブレイク EVERETT COLLECTION/AFLO

<神がかり的な演技で観客をクギ付けにしてきたカリスマ俳優のアル・パチーノが、その原動力を垣間見せる自伝『サニー・ボーイ』を発表>

私の友人にアル・パチーノ(84)の熱烈なファンがいる。仮に彼女をセリーヌと呼ぶ。

「熱烈」は誇張じゃない。セリーヌはグループチャットにパチーノのステッカーを送り付け、400ドルもするポスターを買おうとし、出演作は年代順にそらで言える。パチーノが亡くなったら、そのときは忌引休暇を取るつもりだ。


私自身はそこまでハマれない。『ゴッドファーザー』も『ヒート』も見た。狂気じみたせりふ回しや体当たりの演技はすごいが、やはりセリーヌの執着は理解できない。

だからパチーノが自伝を出版すると聞いて、理解を深めるチャンスだと思った。指南役はもちろんセリーヌ。一緒に自伝を読んで私をアル・パチーノ教に洗脳してほしいと頼むと、「涙が出るほどうれしい」と快諾してくれた。

まずは予習におすすめの映画3本を挙げてもらい、一緒に鑑賞した。1本目の『狼たちの午後』は「手に汗握る」という表現がぴったりの作品だった。銀行強盗に扮したパチーノは瞳に野蛮さを宿し、この若者はきっといつか爆発すると観客をハラハラさせる。

パチーノに爆発は付き物だと、セリーヌは言う。「たいてい演技がちょっとくどいんだけど、そこがいいの」

『ゴッドファーザー』の抑えた演技は例外的だ。セリーヌいわく、「狂気をにおわせるにとどめたからこそ、あの役はうまくいったのかも」。

身長168センチの小柄な体にあれだけのエネルギーを秘めているのだから、驚きだ。

編集部よりお知らせ
ニュースの「その先」を、あなたに...ニューズウィーク日本版、noteで定期購読を開始
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米英首脳、両国間の投資拡大を歓迎 「特別な関係」の

ワールド

トランプ氏、パレスチナ国家承認巡り「英と見解相違」

ワールド

訂正-米政権、政治暴力やヘイトスピーチ規制の大統領

ビジネス

英中銀が金利据え置き、量的引き締めペース縮小 長期
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    アジア作品に日本人はいない? 伊坂幸太郎原作『ブ…
  • 7
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 8
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    「ゾンビに襲われてるのかと...」荒野で車が立ち往生…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 10
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中