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科学者「オッペンハイマー」を描く試みが不完全...原爆と水爆の違いも説明せず...映画に感じた「不満」

SCIENCE VS NARRATIVE

2024年4月9日(火)13時00分
チャールズ・サイフェ(ニューヨーク大学ジャーナリズム研究所所長)

こうして物理学者や数学者を主人公にした映画によくあるパターンと同じように、天才的な頭脳を持つが故に精神を病むようになった男が描かれていく。実際、オッペンハイマーが観客に向かって、「私は隠された宇宙があるという幻影に苦しめられた」と語りかけるシーンもある。量子力学を示唆する星やら閃光やらが飛び交う映像も、ところどころに挿入されている。

古代ギリシャ人は、哲学者タレスが星を見上げていたために穴に転落したと考えたが、ノーランが描くオッペンハイマーも科学のことばかり考えていた変わり者だ。「あれほどのことが分かる男が、どうしてこれほど盲目なのか」というある人物のセリフはそれを踏まえている。

多くの科学史家と同じように、筆者も映画『オッペンハイマー』については複雑な感情を多々抱いた。ある科学者の人生を芸術的に描いた素晴らしい作品であるという点には、全く異論はない。

だが、科学を通して世界を見るとはどういうことなのかという描写を省略している以上、科学者オッペンハイマーを描く試みが不完全に感じられるのは避けられない。

©2023 Scientific American, a division of SpringerNature America, Inc. Distributed by The New York Times Licensing Group

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