最新記事
アート

「脅すのではなく、前向きなメッセージで」...地球に優しい行動をサイケなアートで「励ます」理由とは?

2023年10月10日(火)10時25分
デービッド・H・フリードマン
ハンナ・ロススタイン, HANNAH ROTHSTEIN

ハンナ・ロススタイン COURTESY OF HANNAH ROTHSTEIN

<「簡潔さは美点」。不穏なイメージを提示するだけでなく、前向きな変化に焦点を当てたい...。地球環境改善のメッセージを込めるアーティストの挑戦>

昨年、あるロビーに座っていたハンナ・ロススタインは、壁に飾られた1960年代のサイケデリック・ロックのポスターたちに目を留めた。当然ながら、そのとき頭に浮かんだのは気候変動のことだった。

 
 
 
 

飛躍しすぎと思うかもしれないが、そんなことはない。アーティストのロススタインがここ数年、力を入れているのは気候変動がテーマの作品。それらのポスターからひらめきを得て、彼女の最新プロジェクトは生まれた。

ジェファーソン・エアプレインやクリームといったバンドのLPジャケットのようなグルービーなデザインで、気候変動の解決策を魅力的に見せるポスターだ。

大衆文化を自分なりに解釈した作品を手がけてきたロススタインは2017年、気候変動に着目した。

「人々の考えが大きく変わるには演劇、音楽、視覚芸術といったアートが必要だ」と彼女は言う。「視覚芸術を使い、気候変動対策を前進させたかった」

最初のプロジェクトは、1930年代に作成された国立公園のポスターからヒントを得た。

その「国立公園2050」シリーズはオリジナルにひねりを加え、30年にわたる異常気象で荒廃した公園──間欠泉が消えたイエローストーン、湖のないクレーターレイク、火に焼かれたグレートスモーキー山脈など──が描かれている。

彼女の目標は、多くの人があまりに簡単に無視してきた、進行中の災害を直視してもらうこと。「いくら大きな問題でも、人は目の前に来るまで気にしないものだ」とロススタイン。

「それを変えるには、遠くて抽象的なものを、差し迫った具体的なものに感じさせる必要がある。つまり未来を現在に持ってくればいい」

ポスターは、気候変動のメッセージを脳の別の部分に伝えられると彼女は言う。「言葉と数字で科学的に説明すると、人々は退屈しがちだ。視覚を使えば一瞬で注目を引ける」

国立公園に続き制作したのは、「50州の変化」シリーズ。よくある観光ポストカードに似せた版画だが、干ばつで地割れのできたアリゾナ、水没したテキサスなど、お決まりの光景が気候変動で破壊されている。

【20%オフ】GOHHME 電気毛布 掛け敷き兼用【アマゾン タイムセール】

(※画像をクリックしてアマゾンで詳細を見る)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ドイツ連立与党、国民の不満が過去最高=世論調査

ビジネス

スリランカ向け支援、IMFが2回目の審査承認 経済

ワールド

米大統領選、トランプ氏がバイデン氏を2ポイントリー

ビジネス

焦点:FRB、政治リスク回避か 利下げ「大統領選後
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:姿なき侵略者 中国
特集:姿なき侵略者 中国
2024年6月18日号(6/11発売)

アメリカの「裏庭」カリブ海のリゾート地やニューヨークで影響力工作を拡大する中国の深謀遠慮

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車の猛攻で、ロシア兵が装甲車から「転げ落ちる」瞬間

  • 2

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア

  • 3

    毎日1分間「体幹をしぼるだけ」で、脂肪を燃やして「勝手にやせていく体」をつくる方法

  • 4

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思ってい…

  • 5

    長距離ドローンがロシア奥深くに「退避」していたSU-…

  • 6

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 7

    カカオに新たな可能性、血糖値の上昇を抑える「チョ…

  • 8

    【衛星画像】北朝鮮が非武装地帯沿いの森林を切り開…

  • 9

    謎のステルス増税「森林税」がやっぱり道理に合わな…

  • 10

    バイデン放蕩息子の「ウクライナ」「麻薬」「脱税」…

  • 1

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思っていた...」55歳退官で年収750万円が200万円に激減の現実

  • 2

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車の猛攻で、ロシア兵が装甲車から「転げ落ちる」瞬間

  • 3

    認知症の予防や脳の老化防止に効果的な食材は何か...? 史上最強の抗酸化物質を多く含むあの魚

  • 4

    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 5

    カラスは「数を声に出して数えられる」ことが明らか…

  • 6

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開する…

  • 7

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…

  • 8

    堅い「甲羅」がご自慢のロシア亀戦車...兵士の「うっ…

  • 9

    「クマvsワニ」を川で激撮...衝撃の対決シーンも一瞬…

  • 10

    毎日1分間「体幹をしぼるだけ」で、脂肪を燃やして「…

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 4

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…

  • 5

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 6

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 9

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思ってい…

  • 10

    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中