最新記事

世界に挑戦する日本人20

今だから語れる、米倉涼子が明かしたブロードウェイ『シカゴ』初主演の舞台裏

2022年9月9日(金)11時40分
小暮聡子(本誌記者)

220906p30_Yonekura_02edit.jpg

アメリカ人のロキシー役をアジア人として初めて演じた米倉とヴェルマ役のライト(右)。写真は19年のブロードウェイ公演 PHOTO BY MASAHIRO NOGUCHI

――自分は歓迎されていない、と思うこともあったか。

ありました。いつも、あちこちで感じていた。英語で何を言っているのか聞こえないと言われて、そこに座ってワンツースリーフォーって10を数えるところからやれと言われたり。踊りもやらせてくれないしセリフも言わせてくれないから、通訳さんと2人で練習するしかなかった。もっとやらせてください、もっとやらせてくださいって、劇場に通ってお願いして。

間違った英語をたくさん使っていたし、相手が何を言っているか分からないけど、うんうんうん、と言ってみたり。この子、おかしいなって思われていたと思う。リョウコはコメディアンっぽいと、よく言われていた。たぶん、英語を使えない部分を体を使って表現しているからだと思う。

――味方になってくれる人はいなかったのか。

スタッフの中には優しい人もいたし、もう引退したおじいちゃんは一緒に靴を探しに行ってくれた。アムラさんはものすごく優しかったです。味方はアムラと、日本にも来ていた彼女の旦那さん(ドラマー)と、外国人のアンサンブルの中に入ってきたジェーンという女の子。彼らがいなかったら私、厳しかったですね。やり切れなかったと思う。

――周りが認めてくれたのは、実際に公演が始まってから?

はい。お客さんが多かったので、あれ?っとなった。アジア人の方がたくさん来てくださったおかげで、リョウコって日本のスターなのかもしれないね、と思ってくれたみたい。あとは、差し入れもたくさんしました。最後はスタッフとキャスト全員にお箸をプレゼントして、一人一人にメッセージを書いて。みんなと仲良くなりたいっていう思いで、とにかく必死だった。

――それでも、やって良かったと思ったか。

思いましたね。(17年に)2回目の公演をやったときにも思った。おかえりって言ってくれるし、知っている人たちもいるし。(19年に)3回目をやったときはもう、「はい、行くよ」って始まって。

――シカゴチームへの入り方も自然に......。

自然ではないですよ。私からすると挑戦だけど、彼らは毎日あの舞台に立っているわけだから。でも新しい人も入ってくるし、この間はパメラ・アンダーソンというモデルさんが初のミュージカルで、ロキシー役で初主演でした。私も見に行って、彼女がめちゃくちゃ緊張している姿は10年前の自分を見ているようだった。周りの人がなんとか助けようとしていて、その人ができなくても、できるように周りの人がさせるのが、シカゴファミリーなんだなぁって。私のときも助けてくれる人がいたからやり切ることができたんだと改めて思う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

日中双方と協力可能、バランス取る必要=米国務長官

ビジネス

マスク氏のテスラ巨額報酬復活、デラウェア州最高裁が

ワールド

米、シリアでIS拠点に大規模空爆 米兵士殺害に報復

ワールド

エプスタイン文書公開、クリントン元大統領の写真など
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦い」...ドラマ化に漕ぎ着けるための「2つの秘策」とは?
  • 2
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 3
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 4
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 5
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 6
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 7
    70%の大学生が「孤独」、問題は高齢者より深刻...物…
  • 8
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 9
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 10
    ウクライナ軍ドローン、クリミアのロシア空軍基地に…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中