最新記事

エネルギー

洋上風力発電を船で輸送 ZOZOスーツ開発した男が仕掛ける新事業

2021年8月18日(水)19時02分
洋上風力発電の設備

「ZOZOSUIT(ゾゾスーツ)」などの開発を手掛けた元ZOZOCOO(最高執行責任者)の伊藤正裕氏が、再生エネルギー分野で新事業を仕掛ける。写真は風力発電設備。英フロッドシャムで昨年4月撮影(2021年 ロイター/Molly Darlington)

「ZOZOSUIT(ゾゾスーツ)」などの開発を手掛けた元ZOZOCOO(最高執行責任者)の伊藤正裕氏が、再生エネルギー分野で新事業を仕掛ける。伊藤氏がCEO(最高経営責任者)を務める「パワーエックス」(東京都港区)は、洋上風力で生み出した電力を輸送する「電気運搬船」と「蓄電池工場」を事業の柱とする。

伊藤氏は「テクノロジーで日本の、世界の役に立ちたいとずっと考えていた」と話した。事業の具体的な構想は1年程度前から練っていたという。

政府は、2050年のカーボンニュートラルに向けて、洋上風力が有力な手段の一つになるとみている。洋上風力は、2030年までに1000万Kw、40年までに3000万―4500万Kwの案件形成を目標としている。

課題となっているのは、海上で発電した電力をどのようにして消費地に運ぶか。パワーエックス社は、バッテリーに直接蓄電し、自社開発の電気運搬船で洋上から変電設備まで運搬することを目指す。伊藤氏は「海底ケーブルはコストや時間がかかるし、環境面でも問題が起きる。運搬船がケーブルの代わりになる」と説明する。また、海上を電気運搬船が航行することで、災害時には非常用電源として活用することができる。会長に就任したヘリオスの鍵本忠尚CEOは「電気で救える命がある」と、電気運搬船の有用性を語っている。

電気運搬船は25年までに初号船の開発を行う計画。伊藤氏は「25年に1隻作って実証実験を行った後は、世界中に展開したい」と話している。

この事業が軌道に乗るまでは、蓄電池事業が先行することになる。同社の電池事業は、セル製造ではなく、船舶用電池、電気自動車(EV)急速充電器用電池、グリッド電池などの大型蓄電池のパッケージングを行う。22年に100億円前後を投じて、工場建設を開始。24年に1GWhでスタートする。電池を利用する先や、電池を使ってサービスを展開しようとする先などと資本業務提携も考えている。

同社の社外取締役として、スウェーデンに拠点を置く蓄電池ベンチャーNorthvoltの創設者兼COOのパオロ・セルッティ氏、元グーグル幹部のシーザー・セングプタ氏、米ゴールドマン・サックス元パートナーのマーク・ターセク氏が就任している。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・中国人富裕層が感じる「日本の観光業」への本音 コロナ禍の今、彼らは何を思うのか
・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は...


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

EU、ロシア産LNG禁輸を1年前倒しへ 制裁第19

ワールド

EU、ロシア産LNG禁輸を1年前倒しへ 制裁第19

ビジネス

三井住友FG、米ジェフリーズに1350億円を追加出

ワールド

ウクライナ、新たなIMF融資模索 現行融資は27年
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 6
    アジア作品に日本人はいない? 伊坂幸太郎原作『ブ…
  • 7
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 8
    「ゾンビに襲われてるのかと...」荒野で車が立ち往生…
  • 9
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 10
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中