最新記事

独占手記

【再録】レイア姫が語った『エピソード4』の思い出

キャリー・フィッシャーが99年に本誌に寄せたハリソン・フォードへの淡い恋と『スター・ウォーズ』撮影秘話

2015年12月15日(火)19時38分
キャリー・フィッシャー(女優)

ゴールデンガール フィッシャーは1977年公開の『スター・ウォーズ/新たなる希望』のレイア姫役に抜擢されたことで、一躍大スターになった jpa1999-iStockphoto.com

 想像してみてほしい。私はウェストウッドビレッジで『マトリックス』を見ている。主演のキアヌ・リーブスはたくましくて、おしゃれでかっこいい。私は一人。この映画のテレビCMは娘のビリーと一緒に見たのだけれど、ビリーはまだこの映画には幼すぎる。だから私は一人で来た。

 ビリーには、昔の『スター・ウォーズ』ぐらいがちょうどいい。ビリーは今でも、「レイアの泡に包まれれば、気分はお姫さま」と書いてある古いせっけんを大切にしている。私の顔がキャップになっているシャンプーの瓶もお気に入りだ。

 娘は学校にもレイア姫のキャラクターがあしらわれたファイルを持っていく。それを見ると私は胸が熱くなる。ファイルがぼろぼろになってしまったので、私はジョージ(・ルーカス)に電話して、ルーカスフィルムの倉庫から、今ではプレミアムがついているファイルを探してもらった。

 さて、娘をおいてきた私は、映画館で独りポップコーンを買っている。外は雨。なのに映画館の前では、『スター・ウォーズ エピソード1』の封切りを待つ人たちがもう列を作っている。封切りまでまだ1カ月もあるというのに。

 隣でスナックを買っていた女性が、「あの顔」で私を見る。「今度の『スター・ウォーズ』にも出ているの?」と人々が私に聞く前にする、あの顔だ。彼女が口を開く前に、私は言った。「いいえ、出ていません。だってあれは、私が出た映画の時代よりずっと昔の話ですもの」。どうやら、納得してもらえたようだ。

忘れられない鉄のビキニ

 客席では、観客が『エピソード1』の予告編に沸いている。これを見ると、前の3部作がいかにも古くさく見える。遠い遠い昔の映画のように......。

 それで私は思い出した。ハリソン・フォードが今のようなスターになる前に、彼に夢中になったことを。最初の『スター・ウォーズ』で共演したとき、私は19歳で彼は34歳だった。当時の日記には、こんなことが書いてある。

「人間なんかに恋しないで、椅子に恋をしなきゃ。椅子には、人間のもつすべてがある。ちょっと控えめなだけ。でも、それこそ私が必要なもの。感情も知的な反応もぬくもりも、みんな控えめ。控えめな同意、忍耐、反応。控えめなほうがかえって楽しい。そうよ、椅子を愛そう。家具を愛して心を満たさなきゃ」

『スター・ウォーズ』が大ヒットしたころ、私たちは映画館にできた行列のわきを車で走ったものだった。まったく現実感がなかった。

 有名人としての振る舞い方も知らなかった。宣伝ツアーで全米を回ったときは、マスコミの取材がすむと地元の遊園地に直行した。シアトルでハリソンが、トークショーに出たスーツ姿のまま、観覧車の箱の中でふざけていた姿が目に焼きついている。

 撮影中の思い出といえば『ジェダイの帰還』で着た鉄のビキニは忘れられない。地獄の責め苦みたいなものだったから。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルがイラン再攻撃計画か、トランプ氏に説明へ

ワールド

プーチン氏のウクライナ占領目標は不変、米情報機関が

ビジネス

マスク氏資産、初の7000億ドル超え 巨額報酬認め

ワールド

米、3カ国高官会談を提案 ゼレンスキー氏「成果あれ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦い」...ドラマ化に漕ぎ着けるための「2つの秘策」とは?
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 6
    70%の大学生が「孤独」、問題は高齢者より深刻...物…
  • 7
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 8
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 9
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 10
    ウクライナ軍ドローン、クリミアのロシア空軍基地に…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中