最新記事

映画

F1映画『ラッシュ』は熱くスリリング

70年代を舞台に天才レーサー、ニキ・ラウダとジェームズ・ハントの戦いを描いたロン・ハワード監督に聞く

2014年2月12日(水)15時04分
大橋 希(本誌記者)

実力派の真骨頂 真実の物語だからこそスリルに満ちた作品になる、と語るハワード © 2013 RUSH FILMS LIMITED/EGOLITOSSELL FILM AND ACTION IMAGE.ALL RIGHTS RESERVED.

 70年代に活躍したF1の名レーサー、ニキ・ラウダとジェームズ・ハントをご存じだろうか。性格もレーススタイルも対照的な2人は、76年のグランプリシリーズで熾烈なチャンピオン争いを繰り広げた。しかしラウダが8月のドイツグランプリで大クラッシュを起こし、瀕死の重傷を負う――。

この76年のシリーズを軸に、2人の宿命の戦いを描いた映画『ラッシュ/プライドと友情』が日本公開中だ。監督は『バックドラフト』『ダ・ヴィンチ・コード』など数々の映画で知られるロン・ハワード。頭脳派のオーストリア人であるラウダを演じたダニエル・ブリュールも、女好きで奔放なイギリス人のハントを演じたクリス・ヘムズワースも見事なほどの適役だ。

F1ファンでなくても、ラウダの壮絶な事故を知らなくても、男同士の戦いに興味がなくても、この映画を見れば強力な磁力に引きつけられるだろう(クライマックスとなるレースの舞台が富士スピードウェイなのも興味深い)。冒頭から観客をぐいぐい引き込み、ときに静謐なドラマをみせながら最後まで突っ走る快作を手掛けたハワードに話を聞いた。

──『ビューティフル・マインド』『フロスト×ニクソン』など、あなたはこれまでも実話に基づく作品を手掛けてきた。実在のモデルや物語があるからこその難しさ、また利点は何だと思うか。

まず難しいのは、いろいろと調べて事実を集めたうえで、物語のどこに焦点を合わせるかを決断すること。監督として、語り手として、自分が観客に何をいちばん伝えたいかを決めることだ。

それにドキュメンタリー映画ではないから、わくわくできるような娯楽性も必要になる。そうしたクリエイティブな決断をどうすればいいか、いつも明確な答えがあるわけじゃないから難しい。

 強みとしては、まさに「事実は小説より奇なり」ということ。映画になるような実話は本当に驚くべきもので、信じられない結末だったりする。もし僕がフィクションとして作ったら、観客は「でっち上げだ。こんなのありえない」と感じることもあるだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

マクロン氏、プーチン氏のイスラエル・イラン危機仲介

ワールド

原油先物続伸し3%超上昇、イラン・イスラエルの攻撃

ビジネス

ECB、2%のインフレ目標は達成可能─ラガルド総裁

ワールド

トランプ氏、イラン・イスラエル和平を楽観視 プーチ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中