最新記事

映画

『THIS IS IT』振付師が語る秘話

長年マイケル・ジャクソンの振付師を務めたトラビス・ペインが語る映画の舞台裏と「キング・オブ・ポップ」の知られざる素顔

2010年1月27日(水)13時25分
映画を超える?

1月27日発売の映画『THIS IS IT』のDVD・ブルーレイには、2時間を超える未公開映像が収録されている ©2009 The Michael Jackson Company, LLC. All Rights Reserved.

 92年に発売されたマイケル・ジャクソンのシングル『リメンバー・ザ・タイム』のビデオに参加して以来、彼のツアーに欠かせない存在となった振付師トラビス・ペイン。マイケルが昨年ロンドンでの開催を予定していたコンサートのリハーサル映像や舞台裏を収録した映画『THIS IS IT』では、アソシエイトプロデューサーも務めている(1月27日にソニー・ピクチャーズエンタテインメントよりDVDとブルーレイが発売)。本誌・佐伯直美がペインに話を聞いた。

――DVD特典映像に入っているダンサーのオーディション映像はすごい熱気だった。いまだに熱狂的なファンがあれほどいたことに驚いた?

 驚きはしなかった。でも、今も若いファンがあんなにいると知って嬉しかった。世界から集まった約5000人から13人選んだ。年は19歳〜30歳で、最年長でもマイケルより20歳近く若かった。

――マイケルと初めてリハーサルした日は大騒ぎだったとか。

 マイケルは人を驚かせるのが大好きで、あの日も自分が来ることは秘密にしてほしいと言われていた。だから当日、ダンサーたちは信じられないって感じで大興奮だった。

――(92年に)あなたがマイケルに初めて会ったときはどうだった?

 夢のようだった。5歳の頃からいつかマイケルと一緒に踊るのを夢見てたから。彼の家で初めて一緒にリハーサルしたとき、気付いたら彼をじっと見詰めていたんだ。マイケルがこっちを見たので、「じろじろ見たりしてすみません。あまりに信じられない状況で」と言った。すると彼は「いいよ、全然構わない。そう感じるのは普通のことだよ」と言ってくれた。

――映画で公開されたリハーサルは、本番とどのくらい違うか。

 全然違う。本番の30〜35%程度の力しか出してなかったと思う。マイケルはショー全体の立案者でもあったから、自分の出番の段取りを確認しながら全員に気を配っていた。マイケルは、ダンサーだけでなくスタッフ全員に「振り付け」があると言っていた。誰にでも間合いや見せ場があるし、時間によって立ち位置も変わる。リハーサルはそれを確認する場だと。

――完璧主義だったマイケルはリハーサルを公開したくなかったかもしれない。

 そう考えるのは分かる。でも、マイケルはすでに以前とは違う視野、違う目的を持っていた。ツアーの準備を始める時点で彼は言った。これはレコードを売るのが目的じゃない、彼が大切にしてきた平和と希望と愛のメッセージを世界に思い出させたいんだ、と。

 温暖化や飢餓、戦争などいま起きているすべてのネガティブな問題が彼を決断させた。プラスの変化を世界にもたらすことは、ちゃんとした衣装よりずっと重要だった。(映画を通して)自分のメッセージを世界と分かち合えたことを、彼は喜んでくれたと思う。

――マイケルは(ムーンウォークなど)世界的に有名な振り付けを数多く生み出したが、プロの目から見て一貫した特徴はあるか。

 マイケルは振り付けにシンプルさを求めた。世界中のファンやダンサーが真似できるようにしたいと考えていたから。(曲作りにおいても)8歳から80歳まで、どんな人が聞いても彼の音楽だとわかるようにしたかった。振り付けも、シンプルで美しいこと――だからこそ覚えやすい。マイケルにとって、その点は非常に重要だった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=小幅高、CPIやFOMC控え慎重姿勢

ビジネス

NY外為市場=ユーロ急落、仏が解散総選挙へ

ビジネス

米長期債に慎重姿勢、高水準の財政赤字継続で=BII

ワールド

国連安保理、ガザ新停戦案を支持する決議採択
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:姿なき侵略者 中国
特集:姿なき侵略者 中国
2024年6月18日号(6/11発売)

アメリカの「裏庭」カリブ海のリゾート地やニューヨークで影響力工作を拡大する中国の深謀遠慮

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    認知症の予防や脳の老化防止に効果的な食材は何か...? 史上最強の抗酸化物質を多く含むあの魚

  • 2

    堅い「甲羅」がご自慢のロシア亀戦車...兵士の「うっかり」でウクライナのドローン突撃を許し大爆発する映像

  • 3

    カラスは「数を声に出して数えられる」ことが明らかに ヒト以外で確認されたのは初めて

  • 4

    公園で子供を遊ばせていた母親が「危険すぎる瞬間」…

  • 5

    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 6

    フランス人記者が見た日本の「離婚後共同親権」が危…

  • 7

    メディアで「大胆すぎる」ショットを披露した米大物…

  • 8

    良い大学を出て立派な職業に就いても「幸せとは限ら…

  • 9

    ロシア軍が「警戒を弱める」タイミングを狙い撃ち...…

  • 10

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が34歳の誕生日を愛娘と祝う...公式写真が話題に

  • 3

    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車が、平原進むロシアの装甲車2台を「爆破」する決定的瞬間

  • 4

    認知症の予防や脳の老化防止に効果的な食材は何か...…

  • 5

    カラスは「数を声に出して数えられる」ことが明らか…

  • 6

    「サルミアッキ」猫の秘密...遺伝子変異が生んだ新た…

  • 7

    アメリカで話題、意識高い系へのカウンター「贅沢品…

  • 8

    堅い「甲羅」がご自慢のロシア亀戦車...兵士の「うっ…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 10

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「…

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 4

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…

  • 5

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 6

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 7

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 8

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 9

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 10

    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中