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00〜09年の忘れ難い映画ベスト10

本誌の辛口批評家を魅了した21世紀最初の10年の傑作10作品

2009年12月24日(木)15時03分
デービッド・アンセン(映画担当)

銀幕の魔法 『千と千尋の神隠し』を筆頭に、この10年で多くの傑作アニメーションが誕生した
©2001 二馬力・GNDDTM

(1)『千と千尋の神隠し』(2002年アメリカ公開)

 アニメーションが単なる子供向けの娯楽とみなされなくなって久しい。2000〜09年の10年間にも、珠玉の作品が数多く誕生した。

『ファインディング・ニモ』や『ウォーリー』、新作『カールじいさんの空飛ぶ家』を送り出してきたピクサー社の功績が際立っているのは言うまでもない。01年には愉快な『シュレック』第一弾を発表し、今年はウェス・アンダーソンが児童文学の名作『父さんギツネバンザイ』を映画化した。 

 もっとも、至高のアニメーションはいまや世界中で誕生している。フランス製の『ベルヴィル・ランデブー』や『ペルセポリス』、イスラエルの『戦場でワルツを』、日本の今敏監督の『パプリカ』などアニメーションの地平を切り開いた作品は多い。

 なかでも最高に素晴らしかったのは、宮崎駿監督の魅惑的な『千と千尋の神隠し』。霊界に迷い込んだ10歳の女の子が元の世界に戻るまでの冒険を描いた物語だ。

 日本が生んだアニメの巨匠は現実と夢の境界をぼかしながら、心が痛む素敵な寓話を生み出した。年齢に応じてさまざまな解釈が可能だから、誰もが楽しめる。私たちは子供の頃、こうした作品の魔法に魅せられて映画の世界にのめり込んでいったものだ。


(2)『天国の口、終わりの楽園。』(2001年)

 年上女性との旅を通して大人になる2人の青年を描いたメキシコ映画。アルフォンソ・キュアロン監督の作品のなかでも最も個人的でセクシーで感動的な物語だ。


(3)『ヤンヤン 夏の想い出』(2000年)

 台湾人監督で脚本家のエドワード・ヤンが、恋愛と借金、宗教がらみのトラブルに苦しむ台北の中流家庭を描いた濃密で愉快な3時間の作品。展開が早く、人情にあふれ、ほろ苦い物語には、一生分の経験が詰め込まれているようだ。

 ヤンの監督7作目となった本作は、悲しいことに彼の遺作でもある。ミケランジェロ・アントニオーニやイングリッド・バーグマンなど、この10年間に多くの偉大な映画人がこの世を去ったが、彼らが残した功績は非常に大きい。

 全盛期の59歳で亡くなったヤンは、この10年間で真価を認められるようになったアジア人監督の一人。ほかにも、タイ人のアピチャッポン・ウィーラセタクン(『世紀の光』)、香港のウォン・カーウァイ(『花様年華』)、台湾の蔡明亮(ツァイ・ミンリャン、『ふたつの時、ふたりの時間』)、韓国のホン・サンス(『浜辺の女』)、日本の是枝裕和(『歩いても 歩いても』)など才能豊かな監督が出現した。

 アジア映画の影響はハリウッドにも及び、台湾人監督アン・リーの『グリーン・デスティニー』と『ブロークバック・マウンテン』は大ヒットした。


(4)『愛より強く』(2005年)

 自殺未遂を図ったトルコ系ドイツ人の男女を描く衝撃的で爽快で不気味なラブストーリー。トルコ系ドイツ人のファティ・アキン監督は観客を感情的にも地理的にも知らない場所へ誘ってくれる。


(5)『輝ける青春』(2005)

 あるイタリア人兄弟の半生を1960年代〜2003年に渡って描く壮大な年代記は、なんと6時間の長さ。フィレンツェの大洪水などイタリアの戦後史も盛り込みつつ、ありがちな印象に陥らないマルコ・トゥリオ・ジョルダーナ監督の手腕は絶品。


(6)『エヴァとステファンとすてきな家族』(2001年)

 スウェーデン人監督のルーカス・ムーディソンが、60〜70年代初めに世界中で流行したコミューン暮らしの真髄を完璧にとらえた。

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