じっくり読むほど染みる...元東方神起のジェジュンが紹介し、イ・チョンアが朗読した美学者の散文集
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もっと長生きしなければならないのは、もっと生きながらえるためではない。後回しにしてきたことに対する義務と責任を果たすためだ。そうでないならば、この手詰まりの人生との懸命な戦いに何の意味があろうか。
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バイオレット色の傘を手に朝の散歩をする。昨日は雨を待ち、夜が更けてからベッドに入った。雨はわたしを避けて夜中に降ったようだ。
雨が降ったあとの朝は曇っていて静か、そして湿り気がある。昨日の雨の思い出だろうか。近づいてくる雨の知らせだろうか。濡れた大気の中に霧雨が粉末のように撒かれている。
いまならば晩年のロラン・バルトが理解できる気がする。なぜ彼がポール・ヴァレリーのように「自分のためだけの一冊の本」を書きたがったのか、なぜ生の下流にてもっとも小さい単独者になった自分を通し、あらゆる生と真実について語る長い話をひとつ書こうとしていたのか......。
わたしもまた自分の下流に到着した。急流に出会うごとく、あまりにも突然だったから驚きはしたが、考えてみればどのみち到達する場所だ。少なくともいまのところ、わたしの下流は夜雨が通り過ぎた朝のように静かで無事である。
父のことを思い出す。父は他界する前、勉強して帰宅したわたしに、大きな書斎を作ってあげたいと言った。ここがその書斎ではないだろうか。わたしはここで一冊の本を書かねばならないのではないか。
わたしが愛したあらゆるもの、わたしのことと、わたしに優しくしてくれる人々、恨めしく思いながらも実は深く愛していた世について、わたしだけが書くことのできる一冊の本を書かねばならないのでは。それこそが、いまわたしが下流の書斎に行き着いた理由ではなかろうか。
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朝の長い散歩。
ひとつの季節を生きるにも、草たちはこれほどまでに実直で完璧に、生を生きる。
キム・ジニョン(Jinyoung Kim)
哲学者/美学者 高麗大学ドイツ語独文学科と同大学院を卒業し、ドイツのフライブルク大学大学院(博士課程)留学。フランクフルト学派の批判理論、特にアドルノとベンヤミンの哲学と美学、ロラン・バルトをはじめとするフランス後期構造主義を学ぶ。小説、写真、音楽領域の美的現象を読み解きながら、資本主義の文化および神話的な捉えられ方を明らかにし、解体しようと試みた。市井の批判精神の不在が、今日の不当な権力を横行させる根本的な原因であると考え、新聞・雑誌にコラムを寄稿。韓国国内の大学で教鞭をとり、哲学アカデミーの代表も務めた。バルト『喪の日記』の韓国語翻訳者としても知られる。
『朝のピアノ 或る美学者の『愛と生の日記』』
キム・ジニョン[著]
小笠原藤子[訳]
CEメディアハウス[刊]
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