ニュース速報
ビジネス

見通し実現なら利上げ、米関税次第でシナリオは変化=日銀総裁

2025年05月01日(木)17時58分

 5月1日、日銀の植田和男総裁(写真)は、金融政策決定会合後の会見で、現在の実質金利は極めて低い水準にあり、今後、日銀の見通しが実現していくとすれば経済・物価情勢の改善に応じて利上げしていくことになると述べた。同日、東京で撮影(2025年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

Takahiko Wada Kentaro Sugiyama

[東京 1日 ロイター] - 日銀の植田和男総裁は1日、金融政策決定会合後の会見で、米関税政策の影響で基調的な物価上昇率が2%に到達する時期は「やや後ずれ」するものの、2027年度までの見通し期間内に2%に達するとの見通しは維持されているとし、利上げ路線は変わらないと説明した。新たな見通しの実現に「自信がかなり持てれば、利上げになる可能性は十分にある」とする半面で、米国の関税政策の帰すう次第で見通しそのものが変化する可能性があると話した。

日銀はこの日、金融政策の現状維持を全員一致で決定。展望リポート(経済・物価情勢の展望)では、米国の関税措置を含む各国の通商政策の影響を踏まえ、成長率と物価の見通しを引き下げた。

総裁は会見の冒頭、展望リポートの前提を説明した。各国間の関税交渉がある程度進展することや、グローバルサプライチェーンが大きく毀損(きそん)されるような状況は回避されることなどを前提に作成したと述べた。「それでも無視できないレベルの関税が残るということを前提にした見通しだ」と話した。

植田総裁は、現在の実質金利は極めて低い水準にあり、日銀の見通しが実現していくとすれば経済・物価情勢の改善に応じて利上げしていくことになると述べた。一方で、各国の通商政策を巡る不確実性は極めて高く、見通しが実現していくか予断を持たずに判断していくことが重要だと指摘した。経済・物価の中心的見通しの確度は「これほどまでには高くない」とも述べた。

基調的な物価上昇率の経路について、植田総裁は「これまでのように割と単調に基調的物価が2%の上昇率に収束していくという姿から、いったんちょっと足踏みするようなところを経て、また上昇するという姿にやや修正している」と説明。その中のどこで見通しの確度が高まったか判断できるかは「なかなか難しい問題だ」と語った。

基調的な物価上昇率が2%に到達する時期はやや後ずれしたものの、利上げ時期が同じように後ずれするかは「必ずしもそうではない」とし、「2%に到達する可能性が高いと判断すれば利上げする」と語った。

米国の関税政策の影響については、海外経済の減速、日本企業の収益減少、不確実性の高まりによる支出の先送りなどを通じて、経済の下押し要因になると指摘。物価に対しては、成長ペースの鈍化などを通じて押し下げ方向に作用するとの見方を示した。

植田総裁は、関税政策などで大きな動きがある場合には中心的な見通し自体も変わり得ると指摘。それが将来の金融政策の動向にも影響を与えると述べた。

ロイター
Copyright (C) 2025 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

英住宅ローン融資、3月は4年ぶり大幅増 優遇税制の

ビジネス

LSEG、第1四半期収益は予想上回る 市場部門が好

ワールド

鉱物資源協定、ウクライナは米支援に国富削るとメドベ

ワールド

米、中国に関税交渉を打診 国営メディア報道
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中