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齋藤孝が実践する「知的生産(知的なインプット+アウトプット)」の秘密

2020年3月23日(月)11時10分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

そのために「どの部分を引用するか」と考えながら読むことになるので、情報を読む集中力が高まる。さらに、単に感想や論考を述べるよりも「引用+コメント」は人の心を動かすことになるのだ。

そのための知的フレーズは、記録しておくことが大切である。本やテレビ、インターネットなどから知的な情報を受け取ったら、手帳などに記録しておく。そこでアウトプットの8割は完成しているのだという。

アウトプットをクリエイティブにするために、自分らしいアレンジのスタイルを見つけることも大切だ。齋藤氏は本書でアレンジの例をいくつか挙げている。

まずは、視覚に訴える方法。コマーシャルや動画、写真、図解、漫画などを効果的に使うことで、受け手に強いインパクトを与えることができる。なかでもイラストは内容の知的さ、その人しか描けない独自性があるため、とてもクリエイティブなアウトプットになる。

誰にでもできるアレンジ手法が「セレクトスタイル」だ。「○○選手のすごいプレーベストテン」のような、自分にとって興味があるものをランキング形式で紹介する。

ポイントは、情報の目利きになることである。個性的な素材や題材を集めることができれば、それだけでアウトプットにアレンジを効かせることができるのだ。

質問はインプットであると同時に、アウトプットでもある

ビジネスの場でも、知的なインプットやアウトプットは活用できる。その使い方のひとつとして、齋藤氏はメモを習慣化することを推奨する。

まず、仕事では正確な伝達事項のやり取りが必要になるが、口頭だとどうしても漏れや行き違いが生まれてしまう。それをなくすためにはメモに書き残すことが効果的だ。

また、メモを取ることで、忘れてしまうのを防ぐこともできる。さらに、「これを質問しよう」「自分ならこうする」など、自分に関わらせるように書くと、自分自身のアイデアを深めることにもつながるのだ。

自分の理解度(知的さ)の度合いを示すアピールポイントとしては、「質問」をすればいいという。質問はインプットであると同時に、アウトプットでもある。

質問をするためにはインプットが必要であり、「答えを知る」ことになるため、新たなインプットの流れになる。一方で、「本質的・付帯的な質問を投げかける」「自分の考えを相手に問う」ことになるため、アウトプットでもあるのだ。

もちろん、ただ質問をすればいいというわけではない。少し考えれば分かるようなことを質問するのは知的な質問ではない。そこで齋藤氏は、知的な質問をするコツを次のように説明する。

まずは、人の話を聞くときに、話の内容とともに疑問点を書き出す。疑問点が多数出てきた場合には、優先順位を付け、重要度が高いものから質問する。相手の話から、話の核心に触れるキーワードをとらえて、そのキーワードを質問する「キーワード返し」も効果的である。

なんといっても、基本的な知識が不足していれば、話を深掘りすることができないので、事前準備が大切だ。あらかじめ情報収集をしたり、質問事項を書き出したりしておこう。

齋藤氏によれば、人間は本能的に知的なものを求めている。誰もがSNSを使って世界にアウトプットできる時代だ。アウトプットする側も、それを目にしてインプットする側も、知的な満足感を得るために「知的生産力」の向上を意識してみてはどうだろうか。

プライベートでも、ビジネスの場でも大いに役立つだろう。


知的生産力
 齋藤 孝 著
 CCCメディアハウス

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