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スイスのフライターグ 循環型社会への取り組みを強化

2026年1月29日(木)10時50分
岩澤里美 (スイス在住ジャーナリスト)

カーボンオフセットしているかどうか(※)も尋ねた。オフセットの批判点を踏まえ、同社は今後も自社内でのCO2削減に努めていくという(※森林事業者やDAC=大気中のCO2を直接回収する技術の事業者が提供するカーボンクレジットを購入することで、自社のCO2排出量を埋め合わせる)。

未来を見据えた「循環型」タープの開発

フライターグのファン層と店舗数が増えるにつれ、製品数も増加している。この成長は確かにプラスだが、弱点も残っている。タープの素材は分解して元の素材に戻すことができないため、修理不可能になると、最終的には捨てざるを得ないのだ。

フライターグ「循環型タープ」のプロトタイプのサンプル

フライターグ初の「循環型タープ」のプロトタイプのサンプル。現在、業界パートナーと共同で開発中(撮影=筆者)

この課題に対処するため、同社は4年前から様々な業界パートナーと協力し、「循環型タープ」の開発を進めている。この新しいタープをトラックで使用し、バッグに転用し、最終的にバッグが摩耗したら化学的に分解して、再び新しいタープの原材料にする。タープが循環するという構想だ。

複数のプロトタイプが考案され、そのうち2種類は、各種の車に取り付けて長距離走行テストを実施している。まだテスト中のタープもあるが、昨夏に工場に届けられた使用済みのタープからは約40個のメッセンジャーバッグが作られた。目下、テスターたちが日常生活で使い、耐久性や利便性を評価している。将来、これらの循環型タープが量生化されれば、フライターグの持続可能性は新たなレベルに達するだろう。

なお、「素材を完全に循環させるアイデア」は、同社ですでに実践されている。黒いバッグのMono[PA6]シリーズは、すべてのパーツが特別に開発したナイロン繊維PA6(ナイロン6)のみで作られており、完全に原材料に戻すことができる。また、中古のスキーブーツから作ったiPhoneケースも発売中だ。こちらも分解して原材料に戻し、最大7回まで新しいケースを作ることができる。

同社は創業以来、大々的な宣伝活動は行っていないが、環境負荷の低減に真摯に向き合う姿勢で人々の心を掴んできた。「アップサイクルできる廃材はまだたくさんあります。フライターグと同じ精神を受け継ぎ、サステナブルなビジネスが益々広がっていくことを願っています」とプレス担当者は語っていた。


岩澤里美[執筆者]
岩澤里美
スイス在住ジャーナリスト。上智大学で修士号取得(教育学)後、教育・心理系雑誌の編集に携わる。イギリスの大学院博士課程留学を経て2001年よりチューリヒ(ドイツ語圏)へ。共同通信の通信員として従事したのち、フリーランスで執筆を開始。スイスを中心にヨーロッパ各地での取材も続けている。欧米企業の脱炭素の取り組みについては、専門誌『環境ビジネス』『オルタナ(サステナビリティとSDGsがテーマのビジネス情報誌)』、環境事業を支援する『サーキュラーエコノミードット東京』のサイトにも寄稿。www.satomi-iwasawa.com


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