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SDGs

スイスのフライターグ 循環型社会への取り組みを強化

2026年1月29日(木)10時50分
岩澤里美 (スイス在住ジャーナリスト)

工場に運ばれたタープ

工場に運ばれたタープはここで解体し、ざっくりと裁断する(撮影=筆者)

手間をかけてアップサイクル 環境負荷を低減

工場にはタープが山積みになっていた。毎年、平均6年間路上で使われたタープ270トンが、ヨーロッパ各地からここに運ばれる。「市場に多い赤系や青系だけでなく、様々な色やデザインの中古タープをくまなく探し回っています。アジアでもタープは入手できますが、材質が微妙に異なる点と長距離輸送によるCO2排出量の増加を避けるため、ヨーロッパ産のみを購入しています」とプレス担当者が教えてくれた。

製造工程を実際に見て、本当に手間をかけていることを実感した。最初に見た作業所では、有害物質の検査、タープに付いた金具類の除去(金具類はリサイクル業者に渡す)、ひび割れた部分の切除といういくつものステップを経た1枚の大きいタープが台に乗っていた。

この1枚からバッグのパーツを何枚も切り抜くが、その前に、汚れが染みついたタープの入念な洗浄が必要だ。洗浄は、再生可能エネルギー、雨水、すすぎで使った水、洗浄時の排熱を使い、エネルギーや水の節減を徹底している。洗剤も環境に配慮した製品だ。洗浄後は乾燥室で乾かす。

裁断所では職人たちが透明な型板を使い、手作業でパーツを切り抜く。こうして、世界に1つだけのデザインのバッグが作られる。数年前に導入した大型裁断機は、型紙をレーザーで位置決めすると大きな刃でタープが自動裁断され、作業効率を向上させている。職人も裁断機も、端切れは最小限に抑えるようにしている。大きな端切れは、小物の素材として使われる。

フライターグの職人(デザイナー)

フライターグの職人(デザイナー)は各モデルの透明な型板を使い、幌から最適なパーツをできる限り多くカットする(撮影=筆者)

縫製はポルトガル、チェコ共和国、ブルガリアの長年のパートナー企業に委託している。縫製後の製品は工場に戻ると品質検査を行い、手作業による梱包が行われる。「特定の店で、よりよいデザインが入手できる」という噂も聞くが、プレス担当者によると「特別な柄はありますが、すべての製品が1点物です。世界中のどの店舗でも同じような色合いの製品を手に取ってもらえるよう、均等に箱詰めしています」とのことだ。

輸送に関しては、ヨーロッパ内ではトラックと電車を使う。長距離輸送によるCO2排出量を最小限に抑えるため、アジア(日本、中国、台湾、韓国、タイ)やオーストラリアへは、原則として船便を使っている。

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