最新記事
中国

中国で「ロボタクシー」増加...配車ドライバーは将来を悲観

2024年8月11日(日)11時36分
「アポロ・ゴー」

専門家によると、配車サービスやタクシーのドライバーは世界中の労働者の中で真っ先にAIによる失業の脅威に直面している。中国では既にロボタクシーが数千台規模で街を走っている。写真は武漢で撮影した「アポロ・ゴー」の自動運転車。7月撮影(2024年 ロイター/Sarah Wu)

中国の湖北省武漢市で配車サービスのドライバーとして働くリウ・イーさん(36)は、近所の住民がロボタクシー(自動運転タクシー)を呼ぶのを目撃し、自分の身にまたもや危険が迫っていると感じた。以前は建設業界で働いていたが、全国で売れ残りマンションの供給がだぶついて仕事が減ったため、今年からパートタイムでドライバーをしているが、ロボタクシーの普及で仕事を奪われると不安が隠せない。


 

武漢では中国ネット大手の百度(バイドゥ)傘下のロボタクシー「アポロ・ゴー」と配車サービスが市場を争っているが、リウさんは「誰もが腹を空かせることになる」と配車サービスの将来に悲観的だ。

専門家によると、配車サービスやタクシーのドライバーは世界中の労働者の中で真っ先に人工知能(AI)による失業の脅威に直面している。中国では既にロボタクシーが数千台規模で街を走っている。

自動運転技術はまだ実験段階だが、米国が事故発生を受けて承認手続きを停止したのに対して、中国は試験運行を積極的に進めている。国内で少なくとも19の都市がロボタクシーや自動運転バスの試験走行を行っており、そのうち7都市ではアポロ・ゴーなど5社が人の操作を排した完全自動運転の試験サービスの承認を得ている。

5社のうちアポロ・ゴーは、年内に武漢にロボタクシーを1000台配備し、2030年までに100都市で運営する計画を公表済み。

トヨタ自動車が出資する小馬智行(ポニー・エーアイ)は300台を運行しており、2026年までに運行台数を1000台増やす予定だ。

中国の自動運転技術スタートアップ、文遠知行(ウィーライド)は自動運転のタクシー、バン、バス、街路清掃車で知られる。中国の電子商取引大手アリババグループが支援するオートXは、北京や上海などの都市でサービスを展開。中国の上海汽車集団(SAIC)は2021年末からロボタクシーを運行している。

ボストン・コンサルティング・グループのマネジングディレクター、オーガスティン・ウェグシャイダー氏は「中国では加速が見られ、速いペースで認可が出ている。米国はもっと緩慢だ」と話す。

商業ベースで完全自動運転タクシーを運行している米企業はアルファベット傘下のウェイモのみ。同社元最高経営責任者(CEO)、ジョン・クラフチク氏は「米国と中国の差は際立っている。ロボタクシー開発業者に向けられる視線と業者が越えなければならないハードルは米国の方がはるかに厳しい」と言う。

中国でもロボタクシーの安全性を巡って懸念が生じているが、当局は経済目標達成のために試験を認可し、走行台数は増えている。消息筋によると、一部の中国企業は米国で自動運転車の試験実施を求めているが、米政府は中国で開発されたシステムを搭載した車両を禁止する方針だ。

ボストン・コンサルティングのウェグシャイダー氏は、中国が自動運転車の開発に取り組む姿勢を電気自動車(EV)開発支援になぞらえ、「一度やると決断すれば動きは非常に速い」と警戒する。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

エヌビディア、新興AI半導体開発グロックを200億

ワールド

北朝鮮の金総書記、24日に長距離ミサイルの試射を監

ワールド

米、ベネズエラ石油「封鎖」に当面注力 地上攻撃の可

ワールド

英仏日など、イスラエル非難の共同声明 新規入植地計
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 2
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 5
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 8
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 4
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 7
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中