最新記事
日本経済

日本経済の「脱デフレ」は不動産株にとって、プラスかマイナスか?

2024年6月28日(金)15時05分

オフィスか住宅か、強みに応じで選別も

一方、金利上昇が意識される局面で、業界内での銘柄選別が進む可能性もある。

三井不動産や住友不動産などは「オフィスの賃料が上昇してくると、株価反転のきっかけになり得るのではないか」と、大和証券のシニアアナリスト、増宮守氏は指摘する。これらの銘柄は、不動産株の中でもオフィスの売上高比率が高い。 その兆しは見えつつあるようだ。三幸エステートのチーフアナリスト、今関豊和氏は足元のオフィス市場について、「新規供給が大幅に低下した一方、需要は引き続き高水準で推移している」という。現在は、コロナ禍のリモートワークからオフィス回帰の流れが進んでおり「製造業を中心に業績が好調とみられる中ではオフィスへの投資意欲も高まるだろう」とニッセイ基礎研究所の上席研究員、岩佐浩人氏は指摘する。


 

オフィス賃料は「建築費や共益費が上がれば賃料に反映されやすい面はある」(三幸の今関氏)ものの、需要と供給のバランスで価格が形成される側面が強く、物価との連動性が必ずしも高いわけではないという。三幸エステート子会社のオフィスビル総合研究所では、東京都心5区の1フロア面積50坪以上のオフィスビルの募集賃料については、今後3年間で9.3%の上昇を予測する。 一方、住宅関連は弱い地合いが続くとの見方もある。

東京カンテイの上席主任研究員、井出武氏は「都心の物件は富裕層や海外からのマネー流入で価格上昇がみられるが、実需が多い郊外のマンション価格の上昇は落ち着いている」と話す。物価高の影響で住宅購入を控える動きがある中で、先行きの金利上昇を見越した駆け込み需要も発生していないという。

住宅の売上比率が高い東京建物などにとっては逆風で「建築費などの高騰や金利上昇が中長期的に重しになりやすく、買いが入りづらいだろう」(GCIアセットマネジメントのポートフォリオマネージャー、池田隆政氏)との指摘が聞かれる。



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2024トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 豪ワーホリ残酷物語
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年9月9日号(9月2日発売)は「豪ワーホリ残酷物語」特集。円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代――オーストラリアで搾取される若者のリアル

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

訂正中国が北京で軍事パレード、ロ朝首脳が出席 過去

ワールド

米制裁下のロシア北極圏LNG事業、生産能力に問題

ワールド

豪GDP、第2四半期は前年比+1.8%に加速 約2

ビジネス

午前の日経平均は反落、連休明けの米株安引き継ぐ 円
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 2
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 3
    「見せびらかし...」ベッカム長男夫妻、家族とのヨットバカンスに不参加も「価格5倍」の豪華ヨットで2日後同じ寄港地に
  • 4
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が…
  • 5
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 6
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 7
    トレーニング継続率は7倍に...運動を「サボりたい」…
  • 8
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 9
    Z世代の幸福度は、実はとても低い...国際研究が彼ら…
  • 10
    「人類初のパンデミック」の謎がついに解明...1500年…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 4
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 5
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 6
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 7
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 8
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 9
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中