最新記事
製薬産業

肥満は世界で10億人近く...「肥満症薬」に熱視線、2030年代初頭に世界売上高「年間1500億ドル」予測

2024年6月1日(土)17時24分
肥満症薬に熱視線

ノボノルディスクやイーライリリーの肥満症治療薬に注目が集まる中、供給増加、使用範囲拡大の可能性、競合薬の登場により、この治療薬の世界年間売上高が2030年代初頭までに約1500億ドルに達すると一部専門家が予測している。写真はイーライリリーの「ゼップバウンド」(左)とノボノルディスクの「ウゴービ」(右)の箱(2024年 ロイター/Hollie Adams/Brendan McDermid)

ノボノルディスクやイーライリリーの肥満症治療薬に注目が集まる中、供給増加、使用範囲拡大の可能性、競合薬の登場により、この治療薬の世界年間売上高が2030年代初頭までに約1500億ドルに達すると一部専門家が予測している。

1年前の予測(1000億ドル程度)から大幅に引き上げられた形だ。

医療分析会社「IQVIAインスティテュート・フォー・データ・サイエンス」のシニアリサーチディレクター、マイケル・クラインロック氏は「何百万人もの人々の心を捉えている薬は非常にまれだ」と語った。

IQVIAは今後5年の見通しで、昨年240億ドルだった肥満症薬に対する世界全体の支出額は28年までに1310億ドルに達する可能性があると予測。年間成長率は27%となり、従来予測の13%から大幅に伸びている。

ただ、保険適用拡大がなければ、28年時点の支出額予測を下限で390億ドル、より可能性の高いシナリオとして740億ドルとしている。

クラインロック氏によれば、1310億ドルに達するかどうかは、患者がどれくらいの期間使用し続けるか、他の病気の治療にも使われるかどうか、新しい消費者直接販売モデルが開発されるかどうかに左右される。

23年に販売上限を設けるに至った供給不足は解消されつつあるが、売上高の大部分は依然として製造能力によって制限されているという。

ノボノルディスクの「ウゴービ」とイーライリリーの「ゼップバウンド」の需給はなお逼迫しているが、両社は増産を続けている。

<世界で10億人近くが肥満と推計>

BMOキャピタル・マーケッツは、肥満症薬の世界年間売上高が33年までに1500億ドルに達すると予測。Leerinkは32年までに1580億ドルと見込んでいる。

アナリストらは、この治療薬が心臓発作や脳卒中などのリスクを減らし、睡眠時無呼吸症候群のような慢性疾患の治療に役立つことを示す最近のデータを挙げ、雇用主や保険会社が費用負担することを支持している。

テマ・オビーシティー&カーディオメタボリックETFのポートフォリオマネジャー、デービッド・ソン氏は「消費者の需要があり、満たされていない医療ニーズがある。1億人以上の米国人が肥満で、さらに多くが太り過ぎだ。世界では10億人近くが肥満だと推計されている」と語る。

米国での希望価格が月1000ドルを超える肥満症薬の売り上げが寄与し、イーライリリーとノボノルディスクは世界で最も価値ある企業の仲間入りを果たした。前者の株価は年初来で36%上昇し、後者は33%上昇している。

ライバル各社も、より優れた効果などを持つ治療薬を追求。IQVIAによれば、80以上の肥満症薬が臨床試験の段階に達している。

ソン氏は、新たなプレーヤーの参入で「価格競争が起こるだろう」としつつ、強気の見通しとしては、薬を手に入れやすくなり、販売量が増えることで価格下落の影響が相殺されることになると指摘した。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2024トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 トランプの帝国
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年2月10号(2月3日発売)は「トランプの帝国」特集。南北アメリカの完全支配を狙う新戦略は中国の覇権を許し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ビットコイン下げ止まらず7万ドル割れ、24年11月

ビジネス

米人員削減1月に急増、17年ぶり水準 UPSやアマ

ビジネス

英中銀が金利据え置き決定、5対4の僅差 今後利下げ

ワールド

中国外相、キューバ外相と会談 国家主権と安全保障を
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染拡大する可能性は? 感染症の専門家の見解
  • 3
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新世論調査が示すトランプ政権への評価とは
  • 4
    エプスタインが政権中枢の情報をプーチンに流してい…
  • 5
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 6
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 7
    ユキヒョウと自撮りの女性、顔をかまれ激しく襲われ…
  • 8
    トランプ不信から中国に接近した欧州外交の誤算
  • 9
    「右足全体が食われた」...突如ビーチに現れたサメが…
  • 10
    アジアから消えるアメリカ...中国の威圧に沈黙し、同…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 4
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から…
  • 5
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 6
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 7
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 8
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 9
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 10
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 5
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中