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日本はSDGs浸透度「世界一」、この武器をどう使うかが次の課題だ──蟹江憲史教授

2023年12月21日(木)18時00分
森田優介(ニューズウィーク日本版デジタル編集長)
慶應義塾大学 蟹江憲史

慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科の蟹江憲史教授。日本でSDGsの研究と実践を牽引し、9月には国連事務総長の任命を受け「持続可能な開発に関するグローバルレポート(GSDR 2023)」を共同執筆した Photo:遠藤 宏

<目標年の2030年より先はどうなるか。日本の一番の課題は何か。世界の独立科学者15人の1人として、2023年のグローバルレポートを執筆したSDGsの第一人者に聞いた>

パンデミックと気候変動、戦争の影響を受け、厳しい現状となっているSDGs(持続可能な開発目標)。

しかし「トランスフォーメーション(変革)は可能だ」と、9月に発表された「持続可能な開発に関するグローバルレポート(Global Sustainable Development Report 2023、GSDR 2023)」では希望のメッセージも打ち出された。

国連事務総長の任命を受け、そのGSDRを執筆した世界の独立科学者15人のうちの1人が、日本のSDGs研究の第一人者である蟹江憲史さんだ。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科の教授で、国内外でSDGsや環境問題を中心に活躍している。

ニューズウィーク日本版ではこの春、「日本企業のたとえ小さなSDGsであっても、それが広く伝われば、共感を生み、新たなアイデアにつながり、社会課題の解決に近づいていく――」という考えのもと、「SDGsアワード」を立ち上げた。蟹江さんには本アワードの外部審査員を務めていただく。

11月末に行った蟹江さんへのインタビューを、前後編に分けて掲載する。厳しい現実とGSDRのメッセージ、「気候変動とそれ以外」などを語ってもらった前編に続くこの記事は後編。

前編はこちら:蟹江憲史教授が国連から任命されて書いた、SDGs「2030年まであと7年」の現実と希望

◇ ◇ ◇


――SDGsは2030年を目標年としているが、2030年でのすべての目標達成は難しい。2030年以降はどうなるのだろうか。

2030年になったら終わりなのかと時々聞かれるが、そうではなく、その先も続く。2023年9月の国連総会では、道半ばなので先の話はまだしないほうがいいということで、特に取り上げられなかったが、SDGsに関わる政策の実施は2030年以降も続くと、そういう話をする人が増えてきた。

――SDGsはある意味で、途上国の課題解決を目指し2000年に国連で採択されたMDGs(ミレニアム開発目標)が発展して出来たものと言われる。同じようにSDGsが別の目標に発展する可能性は?

個人的には、そうならない、あまり変わらないだろうと思っている。MDGsは(目標年とされた2015年に)終わるときに達成できていた目標が多かったので、SDGsへと変わった。SDGsはおそらく「成績が悪い」と思う。

SDGsは多岐にわたるので(議論をやり直して)パンドラの箱を開けると、ごちゃごちゃになってしまう面があると思うし、アメリカで政権交代があれば、アメリカの姿勢が変わるかもしれない。ロシアも今の状況を考えると、どうなるか分からない。目標やターゲットをマイナーチェンジだけして、そのまま延長できたら、それが一番いいと思う。

GSDRの執筆時にも、2030年より先をどうするかについて議論になったが、まだ中間報告だから、その後の目標を取り上げるのはやめておこうという結論になった。次のレポートは2027年だが、その時にはおそらく、先の話が出てくると思う。

日本でも、2023年の年末に政府の「SDGs実施指針」を改定した。私は政府の円卓会議のメンバーに入っていて、法的なフレームワークを作るべき等の提言を3月に首相に渡したが、それはほとんど反映されていない。2024年には国連で「未来サミット」が開かれ、もう一度SDGsに光が当たる機会がある。それを機に、政治がどこまで危機感を持てるかが、日本のSDGs推進のカギになると思う。

大企業だけでなく、中小企業でもSDGsの取り組みをさらに進めていこうという雰囲気が日本で醸成されつつある。(そのサポートのためにも)日本は政策面にもっと力を入れるべきだと思う。

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