最新記事
仕事術

なぜ「経営理念」だけでは稼げないのか?...仕事は「中間システム」の具体化がカギだった

2023年11月11日(土)09時22分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

経営理念は「抽象的」で役に立たないのか?

あなたが出版社の編集者であると仮定しよう。上司からは新刊の企画を立てるように言われている。しかしその指示は、「面白くて売れる企画を立ててよ」ということで、いまいち不明瞭だ。ここでは、どのような企画を考えるべきなのだろうか?

もし小説を出版するならば、一般的に、芸術性の高い純文学よりも、エンターテインメント性の高い大衆小説のほうがたくさん売れるとされている。「面白くて売れる」ことを考えるなら、純文学より大衆小説を選ぶべきだろう。

しかし、ここで立ち戻るべきは経営理念である。もし経営理念に「当社の設立目的は、大衆に娯楽を与え熱狂させることである」とあるならば、もちろん大衆が熱狂するようなエンターテインメント小説を企画すべきだ。

もし、そうではなくて「当社の設立目的は、芸術性ある文学を世に広めることである」とあったらどうだろうか?

この場合、上司の指示と経営理念を照らし合わせると、たとえば「芸術性ある文学をなんとか面白くして大衆に受けるようにする」というものが企画の軸になる。

もしこの軸に不自然さを感じるなら、もしかして編集方針(中間システム)と経営理念が噛み合っていないのかもしれない。編集方針がおかしいなら、編集方針を修正する必要がある。あるいは、経営理念が時代に合っていないと言うならば、経営理念のほうを修正する必要があるかもしれない。

いずれにしろ、編集方針という中間システムと経営理念を照らし合わせることで、中間システムは明確になり、洗練されていくのである。

「経営理念というものは抽象的すぎて役に立たない」と思っている人は多い。確かに経営理念単体では抽象的すぎて役に立たないのだが、具体的な中間システムとの関係に目を向けることで、その実用性が分かってくるだろう。


谷川祐基(たにかわ・ゆうき)
日本教育政策研究所代表取締役。1980年生まれ。愛知県立旭丘高校卒。東京大学農学部緑地環境学専修卒。小学校から独自の学習メソッドを構築し、塾には一切通わずに高校3年生の秋から受験勉強を始め、東京大学理科Ⅰ類に現役合格。大学卒業後、「自由な人生と十分な成果」の両立を手助けするための企業コンサルティング、学習塾のカリキュラム開発を行う。著書に『見えないときに、見る力。:視点が変わる打開の思考法』『賢さをつくる:頭はよくなる。よくなりたければ。』『賢者の勉強技術:短時間で成果を上げる「楽しく学ぶ子」の育て方 』(共にCCCメディアハウス)がある。


仕事ができる 具体と抽象が、ビジネス10割解決する。
  谷川祐基[著]
  CCCメディアハウス[刊]

(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)

ニューズウィーク日本版 高市早苗研究
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月4日/11日号(10月28日発売)は「高市早苗研究」特集。課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら



あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

南アG20サミット、「米政府関係者出席せず」 トラ

ビジネス

中国10月物価統計、PPIは下落幅縮小 CPIプラ

ワールド

フィリピン、大型台風26号接近で10万人避難 30

ワールド

再送-米連邦航空局、MD-11の運航禁止 UPS機
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216cmの男性」、前の席の女性が取った「まさかの行動」に称賛の声
  • 3
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 4
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 7
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 8
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 9
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 10
    「非人間的な人形」...数十回の整形手術を公表し、「…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 9
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 10
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中