最新記事
中国経済

中国経済の「日本化」が、日本にもたらす大打撃

HANDLING THE CHINA RISK

2023年9月28日(木)13時40分
木内登英(野村総研エグゼクティブ・エコノミスト)

231003P26_NHN_03.jpg

産業用機械など幅広い分野の日本企業が打撃を受けることが予想される(不二越のロボットアーム、上海) VCG/GETTY IMAGES

リスクを軽減する「代替市場」

昨年の日本の対中輸出の中で、半導体を含む電気機器は22.6%、21.4%は半導体製造装置を含む産業用機械などの一般機械だ。中国経済の下振れは、輸出の減少を通じて日本の資本財メーカー、IT関連メーカーに大きな打撃となる。

さらに、中国経済の減速が日本企業の中国現地ビジネスに与える影響も考慮すれば、自動車、自動車部品、小売りなど、幅広い業種の日本企業に、中国経済減速の悪影響は及ぶことになるはずだ。これは、地政学リスクの高まりを合わせて、日本企業が中国ビジネスを大きく見直すきっかけとなる可能性もある。

中国経済の低迷が日本経済や日本企業に与える打撃は、長期化を覚悟する必要がある。日本では、バブル崩壊の後30年以上にわたって成長率のトレンドが低下を続けている。中国経済の低迷は、長期間、日本の雇用環境を損ね、個人にも中国経済悪化の痛みが実感されていくだろう。

中国ビジネスのリスク、いわゆる「チャイナリスク」については、政治的要素も高まる。今年7月には、スパイ行為を取り締まる改正「反スパイ法」が中国で施行された。スパイ行為の定義が曖昧な下、現地の日本人拘束が増加することが警戒される。また足元では、東京電力福島第一原子力発電所の処理水の海洋放出に反発して、中国国内で日本製品の不買運動も生じている。

そうしたなか、リスクが高まる中国の代替地、いわゆる「チャイナ・プラス・ワン」を模索する動きが強まっている。足元では特にインドへの関心が高まる。今年、インドの人口は中国を抜いて世界一になったとみられ、高い潜在力が改めて注目されているのだ。日本企業では、スズキ、ヤマハなどが従来からインドを重要な生産拠点としてきたが、今後は中国ビジネスで知られてきた資生堂がインドでの販路拡大に本格的に乗り出す。「チャイナリスク」への対応から、日本企業のグローバル戦略の再構築が始まっている。

ニューズウィーク日本版 世界が尊敬する日本のCEO
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年7月1日号(6月24日発売)は「世界が尊敬する日本のCEO」特集。不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者……その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

オープンAI、グーグル半導体を使用 初の非エヌビデ

ビジネス

エヌビディア関係者、過去1年に10億ドル超の株式売

ワールド

米税制・歳出法案、上院で前進 数日内に可決も

ワールド

G7、国際最低課税から米企業除外で合意 「報復税」
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本のCEO
特集:世界が尊敬する日本のCEO
2025年7月 1日号(6/24発売)

不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者......その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影してみると...意外な正体に、悲しみと称賛が広がる
  • 3
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急所」とは
  • 4
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 5
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 6
    キャサリン妃の「大人キュート」18選...ファッション…
  • 7
    ロシア人にとっての「最大の敵国」、意外な1位は? …
  • 8
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝…
  • 9
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 10
    「水面付近に大群」「1匹でもパニックなのに...」カ…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々と撤退へ
  • 3
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 4
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 5
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 6
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 7
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 8
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 9
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 10
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中