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「嫌われようが使命を果たす覚悟」...泉房穂・前明石市長が語った「社会の変え方」

2023年7月6日(木)17時24分
flier編集部

嫌われようが憎まれようが使命を果たす

──泉さんの人生観や価値観に大きな影響を与えた本はありますか。

子どもの頃に読んだ『泣いた赤おに』という児童文学です。人間と仲良くなりたいと願うのに、誰も遊びにきてくれず悲しんでいる赤鬼がいた。そこで友だちの青鬼はこんな作戦を立てた。「人間の村で暴れて悪役を演じる。そこで赤鬼が青鬼(自分)をこらしめれば、人間たちは赤鬼が優しい鬼だと理解してくれるだろう」と。作戦は成功したものの、青鬼は自分と赤鬼がいるとみんなに疑われてしまうから、と姿を消してしまった。

悲しいお話だけど、青鬼は自分の役割を果たしたのだと思います。私自身も、嫌われようが憎まれようが、みんなの幸せのために使命を果たすんだという気持ちでいたし、そこは青鬼の気持ちと重なっていると思います。

政治は本来、尊い仕事。「こども政治塾」開講に込めた願い

──最後に、今後の構想をお聞かせください。

1つは、小学生から大学生向けの「こども政治塾」を開講すること。政治は根回しとかそういうイメージが広がっているけれど、本来は美しく、尊い仕事。社会をよくしたいという志をもつ子どもたちに、早くに政治の可能性を感じてほしい。そして、自分のふるさとを良くしたいと考える子どもを増やしたいという思いが強くあります。

私の父は兄3人を戦争で亡くし、小学校卒業後すぐに漁師になった人ですが、とても勉強家でした。本当はもっと勉強したかっただろう。好きな人生を歩めなかったから、私には「おまえのしたいことをさせてあげたい」といってくれたんです。私が「家でも宿題していいの? ありがとう」と父にいったら、「ありがとうという気持ちは、子どもに返してあげなさい」と。だから自分の子どもだけでなく次の世代を精一杯応援することが恩返しになるんじゃないかな。

2つめの構想は、児童虐待や貧困のなかにいる子どもたちに目配りしていくこと。これまで明石の子は自分の子と思って、親が見捨てても明石市は見捨てないぞという気持ちでやってきました。

今後は、日本全国の子は自分の子という気持ちで、弁護士の資格も活かしながら、一時保護されている子どもなど、困っている子たちのところに会いに行きたいですね。

少数派の人たちに光を当てながら、明石でできたことは他のまちでもできると発信していけたらと思っています。


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泉房穂(いずみ ふさほ)

2023年4月末まで明石市長を務める

1963年 明石市二見町生まれ

1982年 県立明石西高校を卒業

同年 東京大学文科二類入学

1987年 東京大学教育学部卒業

同年 NHKディレクター

1997年 弁護士

2003年 衆議院議員

2007年 社会福祉士

2011年~2023年4月末 明石市長

「5つの無料化」に代表される子ども施策のほか、高齢、障害者福祉などに力を入れて取り組み、市の人口、出生数、税収、基金、地域経済などの好循環を実現。人口は10年連続増を達成。柔道3段、手話検定2級、明石タコ検定初代達人。Twitter: @izumi_akashi

◇ ◇ ◇


flier編集部

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