最新記事
リーダーシップ

「嫌われようが使命を果たす覚悟」...泉房穂・前明石市長が語った「社会の変え方」

2023年7月6日(木)17時24分
flier編集部
泉房穂・前明石市長

泉房穂・前明石市長(flier提供)

<増税なしに子どものための予算を2.38倍に増やし、市議選の投票率は12%上昇。市長として明石市を変えた泉房穂氏にインタビュー>

「冷たい社会を優しい社会に変える」。10歳でそう決意し、48歳で明石市長になった泉房穂さん。明石市独自の子ども施策「5つの無料化」やインクルーシブ条例など、誰ひとり見捨てない社会に向けた施策を次々に実現し、市民から支持され全国から注目を浴びました。

23年4月末をもって明石市長の座を後任の丸谷さんに譲り、新たな道を進んでいる泉さん。ご著書『社会の変え方』に込めたメッセージとともに、泉さんのリーダーシップ論、今後の構想をお聞きします。
※この記事は、本の要約サービス「flier(フライヤー)」からの転載です。

◇ ◇ ◇


明石市長として12年間走り切った充実感

──2023年4月末で明石市長の任期を満了され、多くの子どもたちが見送りに来ていました。12年間を振り返り、いまのお気持ちをお聞かせください。

3期12年間をなんとか走り切ったなという気持ちです。10歳の頃に「冷たい社会を優しい社会に変えたい」と本気で思い、そのために命を捧げよう、人生をかけて使命を果たそうと思ってきました。そこから必死に勉強して、47歳で明石市長にたどり着き、12年間走り切って、自分がいなくても大丈夫な明石をつくってこられたと思っています。市長最後の日には市民が集まってきて花束をくれてありがたかったですね。その意味で充実感もあるし、ちょうど還暦を迎えて人生1周目が終わり、これから2周目がスタートするというわくわく感もあります。

市長にできることは大きく分けて3つ。大きな方向性を定めること、お金をつくること、そして人の意識を変えることなんですよ。

私が大事にしてきたのは「子どもは未来」「誰ひとりとして排除しない」という方向性。みんながハッピーになるには、子どもを本気で応援する町づくりが必要になる。そして、支援の対象を絞り込んだり市民を分断したりせずに、誰ひとり置き去りにしない。こうしたことで生まれる「安心」が、市民のまちや行政への信頼につながると信じてきました。

この哲学をもって明石の市民のためにできること、特にゼロからイチをつくるところは、ほぼ達成できたと思っています。明石市の予算は2000億円規模ですが、増税なしに、子どものための予算を2010年度の125億円から21年度の297億円へと2.38倍に増やした。そして、次の市長がやりたいこともできるよう、財政上の余力もつくりました。自分とはまた違った観点をもった後任にたすきをつなげることができたと思っています。前例主義に常々NOを突きつけてきましたから、退任の最終日には、市職員に「私を忘れてください」と伝えました。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

コメ輸入にかじ切ったと「全く言っていない」、小泉農

ワールド

プーチン氏、50年までの新たなロシア海軍戦略承認=

ワールド

韓国李大統領と石破首相が電話会談、関係強化で合意

ビジネス

午後3時のドルは144円台で売買交錯、投機が円買い
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:韓国新大統領
特集:韓国新大統領
2025年6月10日号(6/ 3発売)

出直し大統領選を制する李在明。「政策なきポピュリスト」の多難な前途

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラドールに涙
  • 2
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、健康に問題ないのか?
  • 3
    ひとりで浴槽に...雷を怖れたハスキーが選んだ「安全な場所」に涙
  • 4
    猫に育てられたピットブルが「完全に猫化」...ネット…
  • 5
    救いがたいほど「時代錯誤」なロマンス映画...フロー…
  • 6
    コメ価格高騰で放映される連続ドラマ『進次郎の備蓄…
  • 7
    プールサイドで食事中の女性の背後...忍び寄る「恐ろ…
  • 8
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 9
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 10
    ディズニーの大幅な人員削減に広がる「歓喜の声」...…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラドールに涙
  • 4
    猫に育てられたピットブルが「完全に猫化」...ネット…
  • 5
    日本の女子を追い込む、自分は「太り過ぎ」という歪…
  • 6
    ウクライナが「真珠湾攻撃」決行!ロシア国内に運び…
  • 7
    ひとりで浴槽に...雷を怖れたハスキーが選んだ「安全…
  • 8
    ペットの居場所に服を置いたら「黄色い点々」がびっ…
  • 9
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
  • 10
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 7
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 8
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 9
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 10
    猫に育てられたピットブルが「完全に猫化」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中