最新記事

ものづくり

なぜファッションが「貧困問題」を解決できるのか? 白木夏子氏インタビュー

2022年6月22日(水)17時57分
白木夏子(ジュエリーブランドHASUNA founder & CEO)

1つめは2011年の東日本大震災のとき。震災復興のために寄付だけでなく、東北での消費やビジネスを応援しようという取り組みがメディアで紹介されました。そこで「エシカル消費」「エシカル商品フェア」といった言葉が広がっていきました。

2つめのターニングポイントは、バングラデシュの縫製工場ラナ・プラザが崩壊した2013年。犠牲になったのは、そこで働いていた1130名、負傷者は2500名以上にものぼりました。劣悪な環境のもとで先進国に向けてのファストファッションを生産していたことが世界に大きな衝撃を与えたのです。このラナ・プラザ崩落事故を機に、製造責任を考えようという動きが芽生え、ファッション業界の人たちがファストファッションへのアンチテーゼとしてのものづくりの道を模索するようになりました。

そして3つめのターニングポイントは、2015年9月の国連サミットでSDGsが採択されたことです。そこから日本の大企業や教育機関でもSDGsを実践に移そうという動きが加速していった。エシカルなものづくりやサスティナビリティに配慮した会社の設立が、一般の方々に広まったのがここ数年ですね。

HASUNA創業時にはエシカルという概念が広がっていくと信じて、啓発活動をコツコツ続けてきました。そのなかで共感してくれる方や、同じように活動する仲間たちがどんどん増えていった。創業時に描いていた未来が現実になってきて、10年あればある程度のことが実現していくのだと改めて思いました。

ミレニアル世代が消費の中心に。企業の存続に欠かせない発想とは?

2030年には、世界の労働人口の75%がミレニアル世代になると予測されています。デロイト・トーマツの「ミレニアル世代の意識調査」によると、ミレニアル世代はその企業が社会や地域にいかに貢献しているかに重きをおいて購買活動をする傾向にあるそうです。

この世代が消費の中心になるということは、エシカルやサスティナビリティの概念を製品やサービスに組み込まないと売れなくなり、企業生命が危ぶまれるということと解釈できます。企業として存続していくためには、ミレニアル世代やZ世代が共感するものをつくることが欠かせない。社会に配慮したものづくりが重視される現状は、これからエシカル・ビジネスを始めたい方にとって追い風といえるでしょう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

フィリピンCPI、4月は前年比+1.4%に鈍化 緩

ワールド

中国大型連休の国内旅行支出8%増、1人当たりはコロ

ビジネス

衣料通販ザランド、第1四半期売上高が予想上回る 通

ワールド

ロシア、原油安でウクライナ紛争解決へ意欲的に トラ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 2
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗と思え...できる管理職は何と言われる?
  • 3
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どちらが高い地位」?...比較動画が話題に
  • 4
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 5
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 6
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 7
    背を向け逃げる男性をホッキョクグマが猛追...北極圏…
  • 8
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 9
    恥ずかしい失敗...「とんでもない服の着方」で外出し…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 2
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 3
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1位はアメリカ、2位は意外にも
  • 4
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 5
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 6
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 7
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 10
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 6
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中