最新記事

米経済

FRBの利上げと米景気後退の懸念、ボルカー・ショックが再来する?

2022年6月20日(月)12時20分
ジョーダン・ワイスマン(スレート誌記者)
FRBのパウエル議長

パウエルは利上げ決定後の会見でインフレ抑制が最大目標を発現 Brendan McDermid-REUTERS

<1979年、当時のボルカーFRB議長は高インフレ収束のために「平均的アメリカ人の生活水準を下げなければならない」と発言。景気は深刻な低迷に陥ったが、物価は抑制状態を取り戻した>

アメリカの向かう先は景気後退──そんな実感が強まっている。

インフレ率は今も沸騰状態で、5月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比8.6%上昇。1981年以来、最も高い伸びを記録した。

FRBはインフレ抑制に懸命で、消費需要を冷まそうと積極的な利上げに動いている。

とはいえ、FRBの取り組みは米経済を停滞に追いやる結果になるのでは、と懸念する向きは多い。小売売上高の減少や住宅市場の冷え込みなど、経済減速の兆候は既にいくつかの分野で表れている。

さらに、ロシアのウクライナ侵攻の影響で、米ガソリン価格は1ガロン(約3.8リットル)当たり5ドル超に急騰している。これは経済にとって二重の痛手だ。

家計に打撃を与える一方で、FRBはさらに積極的な対応を迫られている。ガソリン価格上昇が、現在のインフレの主な正体だからだ。

こうしたなか、米金融街などは警戒態勢を取り始めた。今や、アメリカが2024年までに景気後退に入る確率は72%との予測もある。

ただし、楽観視を許す単純な事実も存在する。

米経済に疲弊の兆しはあるが、消費支出や雇用の伸びは今も堅調だ。インフレが解消に向かい、FRBが利上げを減速することができれば、経済の収縮は避けられるかもしれない。

だが、本当に景気が悪化するとしたら? 大した対策は期待できないと覚悟すべきだ。

バイデン政権が単独で実行可能な手段は多くない。意味のある対策を取るには、議会の協力が必要だが、11月の中間選挙で共和党が議席の過半数を獲得した場合、協力に前向きになるとは考えづらい。

FRBはどうか。景気後退不安の核にあるのは、FRBのインフレ抑制策そのものだ。

大幅な景気減速を伴わずに物価上昇を抑え込み、ソフトランディングすることは可能──FRB幹部らは今年に入って、自信たっぷりにそう予想してきた。だが最近、その口調は変化している。

6月15日、FRBは0.75%の利上げを決めた。1994年以来、最大の上げ幅だ。FOMC(連邦公開市場委員会)は今回の決定に合わせた経済見通しで、成長率予測を引き下げ、今後数年間に失業率が幾分上昇するとみている。

FRBのパウエル議長は利上げ決定後の会見で、最大の目標はインフレ抑制だと明言。インフレ率を長期目標の2%に戻すために「最大限の努力」をしていると語った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ベトナム共産党、ラム書記長を再任 結束を維持すると

ビジネス

仏総合PMI、1月速報48.6 予想外の50割れ

ワールド

インドとEU、27日に貿易交渉妥結を発表へ=関係筋

ビジネス

エリクソン、第4四半期利益が予想上回る 自社株買い
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:「外国人問題」徹底研究
特集:「外国人問題」徹底研究
2026年1月27日号(1/20発売)

日本の「外国人問題」は事実か錯誤か? 7つの争点を国際比較で大激論

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 2
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレアアース規制で資金が流れ込む3社とは?
  • 3
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 4
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 5
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味…
  • 6
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 7
    老化の9割は自分で防げる...糖質と結び付く老化物質…
  • 8
    韓国が「モンスター」ミサイルを実戦配備 北朝鮮の…
  • 9
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 10
    宇宙人の存在「開示」がもたらす金融黙示録──英中銀…
  • 1
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 2
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 3
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の船が明かす、古代の人々の「超技術」
  • 4
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 5
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 6
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 7
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 8
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 9
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 10
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中