最新記事

脱炭素

中国電力が自社の送電網と切り離した「太陽光発電・駐車場」を作ったわけ

2022年5月11日(水)15時25分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
広島産業会館

広島県立広島産業会館に設置された完全自立型EVシェアリングステーション Courtesy of Panasonic

<太陽光パネルが屋根のように設置された「ソーラーカーポート」を使った実証事業が広島県で始まった。ある意味で自己否定とも言えるような取り組みだが、その狙いは?>

広島市の中心部にあるコンベンション施設、広島県立広島産業会館の駐車場に4月上旬、太陽光パネルが屋根のように設置された「ソーラーカーポート」が設置された。

中には日産リーフとマツダMX-30 EV MODELと、違う車種の電気自動車(EV)が2台。カーポートの脇のデジタルサイネージでは太陽光発電量がリアルタイムで表示され、蓄電状況も把握できるようになっている。

中国電力が旗振り役となって始まった、実証事業の「完全自立型EVシェアリングステーション」である。

「完全自立型」とはすなわち、EVに充電するこの施設がどことも繋がっていないことを示す。中国電力の電力系統から完全に分離・独立しており、太陽光発電と蓄電・制御システムのみで運用される。

電力会社である中国電力にとって、ある意味で自己否定とも言えるような事業だ。中国電力から昨年この話を聞いたときは「耳を疑った」と、パナソニックでスマートエネルギー事業に携わる西川弘記氏は振り返る。

カーボンニュートラルの実現のため、環境省が提唱する「ゼロカーボン・ドライブ」。太陽光や風力などの再生可能エネルギーとEVやプラグインハイブリッド車を組み合わせ、移動時の脱炭素化、すなわち走行時の二酸化炭素(CO2)排出量をゼロにする取り組みだ。

これはなにも自動車メーカーだけの課題ではなく、中国電力では昨年8月、契約した企業の敷地内にEVステーションを設置し、複数の企業と周辺住民とでEVをシェアするカーシェアリングサービス「eeV(イーブイ)」を開始していた。

EVは車体自体が高額なうえ、給電する環境を整えるための負担も大きい。そこで、車両の効率的な利用と費用負担の分散化を目的に事業化したサービスだという。

この「eeV」を発展させる形で、広島県の協力を得て開始したのが今回の「完全自立型EVシェアリングステーション」実証事業だ。複数の企業と周辺住民とでEVをシェアするシステムはそのまま、パナソニックが開発したソーラーカーポートを組み合わせた。

しかし、完全自立型となると、停電や蓄電量が足りなかったときのリスクがあるのではないか。車2台分の充電を賄う小規模な分散型発電所であるソーラーカーポートで、EVのシェアリングサービスを始める意義とはなんだろうか。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ボーイングがカタール航空から160機受注、過去最大

ワールド

一部産油国の供給量見通し下げ、価格低迷で=OPEC

ワールド

プーチン大統領のイラン訪問、日程は未定=クレムリン

ワールド

ロシア外相、イスタンブールのウクライナ和平協議に参
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2029年 火星の旅
特集:2029年 火星の旅
2025年5月20日号(5/13発売)

トランプが「2029年の火星に到着」を宣言。アメリカが「赤い惑星」に自給自足型の都市を築く日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    加齢による「筋肉量の減少」をどう防ぐのか?...最新研究が示す運動との相乗効果
  • 2
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 3
    ゴルフ場の近隣住民に「パーキンソン病」多発...原因は農薬と地下水か?【最新研究】
  • 4
    トランプ「薬価引き下げ」大統領令でも、なぜか製薬…
  • 5
    iPhone泥棒から届いた「Apple風SMS」...見抜いた被害…
  • 6
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映…
  • 7
    終始カメラを避ける「謎ムーブ」...24歳年下恋人とメ…
  • 8
    サメによる「攻撃」増加の原因は「インフルエンサー…
  • 9
    あなたの下駄箱にも? 「高額転売」されている「一見…
  • 10
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」に…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 3
    加齢による「筋肉量の減少」をどう防ぐのか?...最新研究が示す運動との相乗効果
  • 4
    ゴルフ場の近隣住民に「パーキンソン病」多発...原因…
  • 5
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映…
  • 6
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」に…
  • 7
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 8
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 9
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 10
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 5
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 6
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 10
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中