最新記事

経済制裁

ロシア国債が「潜在的デフォルト」 投資家は法的手段を模索

2022年4月25日(月)08時41分

ロシア国債の保有者は裁判を起こすことができる。しかし補償の獲得や資産の差し押さえを目的としたこうした手続きは、費用がかかり、時間も長引くことが多い。相手がロシアの場合、法的措置を進めるのは一層厄介になるだろうと弁護士は見ている。

というのも問題となっているロシア国債の起債条件は紛争が起きた場合の管轄地を定めていないためで、債券保有者はどこで訴訟を起こすのかを決めるのが一段と困難になる。

また、ロシアのシルアノフ財務相は、西側諸国からデフォルトを強いられれば法的措置を取ると述べており、ロシア政府は支払い能力の欠如を制裁のせいにする防衛策を取ると、弁護士らは予想している。

国債の発行条件は英国法に縛られている。英国法には「目的の達成不能」という「不可抗力」に似た法原理があり、ロシアはこれに基づいて主張を展開することができる。つまりロシア政府が、支払いを行おうとしたが、制裁のために西側がそれを許さなかったと主張することは可能なのだ。

バージニア大学の法学教授で、債務再編の専門家であるミトゥ・グラティ氏は「ロシアはこうした論陣を張る」と見ている。ただ、ロシア政府の成果は限定的だと予想。「確かにこれは戦争だが、ロシアが引き起こした戦争だ」と指摘した。

投資家にとってもう1つの選択肢は、ロシアに対して直接仲裁を求めることだ。投資家と国家間の紛争の仲裁では、二国間投資条約を結んでいる国の債権者が、国に対して直接請求を行い、金銭的な損害賠償やその他の救済を求めることが認められている。

国連貿易開発会議(UNCTAD)によると、ロシアは欧州連合(EU)加盟国の大部分、英国、カナダなど数十カ国とこのような条約を結んでいる。

フラニツキー氏によると、こうした仲裁手続きは米国の裁判所で執行される可能性がある。

「悪夢のシナリオは、ウクライナ問題が解決せず、制裁が数カ月、いやもっと長く続くことだ」と言う。

(Rodrigo Campos記者、Karin Strohecker記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2022トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・ロシア戦車を破壊したウクライナ軍のトルコ製ドローンの映像が話題に
・「ロシア人よ、地獄へようこそ」ウクライナ市民のレジスタンスが始まった
・【まんがで分かる】プーチン最強伝説の嘘とホント
・【映像】ロシア軍戦車、民間人のクルマに砲撃 老夫婦が犠牲に


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、不法滞在者の送還拡大に言及 「全リソー

ビジネス

焦点:日鉄、巨額投資早期に回収か トランプ米政権の

ビジネス

香港取引所、東南アジア・中東企業の誘致目指す=CE

ワールド

米ミネソタ州議員射殺事件、容疑者なお逃走中 標的リ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中