最新記事

経済制裁

ロシア、デフォルトがついに現実化へ 米が国債支払い禁止

2022年4月6日(水)12時24分
ルーブル硬貨

米財務省は、ロシアが米銀に預けている準備資産を外貨建て国債の返済資金として使用するのを差し止めた。写真はルーブル硬貨。2018年10月撮影(2022年 ロイター/Maxim Shemetov)

米財務省は、ロシアが米銀に預けている準備資産を外貨建て国債の返済資金として使用するのを差し止めた。これでロシアが30日の猶予期間内に別の資金を調達するか、何らかの打開策を見つけない限り、デフォルト(債務不履行)が現実化するとの見方が浮上している。

ロシアはウクライナ侵攻開始からこれまで、西側にかつてないほど大規模な経済制裁を科されながらも、何とか対外債務のデフォルトを回避してきた。しかし米政府が締め付けを強化しようとしている以上、返済のハードルは非常に高くなった。

◎米財務省が講じた措置とは

ロシアは4日、外貨建て国債の元本償還として5億5240万ドル、利払いとして8400万ドルの支払い期限を迎えた。

米財務省は従来、ロシア中央銀行が米金融機関に保有する外貨準備をドル建て国債の利払いに充当することについて「基本的にケースバイケース」で容認していた。しかし4日になって、「ロシア政府が米金融機関に設けた口座からのドル建て債返済は一切認めない」と通告した。

既にロシアが持つ金・外貨合計6400億ドル相当のおよそ半分は、米国と同盟諸国により凍結されている。

◎何が変わったか

ロシアが4日に予定していた債務返済額は、2月24日のウクライナ侵攻後で最も大きい。米財務省は、この返済規模が「ロシアにより困難な決断を強いる絶好の機会」になったと説明した。

しかし、米銀が支払いを代行する「コルレス銀行」、つまりロシアの債務返済の実行役となること自体を禁止される兆しは見当たらない。JPモルガンは、コルレス銀行として最近のロシアの利払い業務を行っている。

ロシアはまだ凍結されていない残り半分の準備資産を活用している可能性があり、デフォルト回避のために引き続きこれを頼りにしてもおかしくない。

また、ロシアは原油と天然ガスの輸出代金としてなお数十億ドルを受け取っている。タンカー追跡データを分析した国際金融協会(IIF)の見積もりでは、3月のロシアの原油輸出収入は123億ドルと、前年同月から急増した。

ロシア政府は4日、原油価格上昇のおかげで4月のエネルギー輸出による収入は7984億ルーブル(96億ドル)増加するとの見通しを示した。

◎今後の展開

4日に期限が到来したソブリン債の元利支払いには、30日の猶予期間が存在する。つまりロシアは、実際のデフォルトに陥る前に返済の時間は残されている。

今のところロシア側に返済の意思があり、自国通貨建てでは1998年の財政危機以来、外貨建てでは1917年のロシア革命以来となるデフォルトを免れてきた。

ただ、もう1つ大事な期限が迫りつつある。米国の個人や団体はロシア財務省、中銀もしくは政府系ファンドとの間で、債務返済や利払いに関する取引が一時的に認められており、それを裏付けているのは米財務省外国資産管理室(OFAC)の通達だ。

この通達の有効期限は5月25日。米財務省は延長するかどうか明らかにしてない。ロシアは5月27日に、より大規模な支払いが必要となる。同国の外貨建て債は現在15本、発行残高は約400億ドルに上る。ウクライナ危機以前の段階では、およそ200億ドルをロシア国外の投資ファンドや資産運用会社が保有していた。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2022トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・ロシア戦車を破壊したウクライナ軍のトルコ製ドローンの映像が話題に
・「ロシア人よ、地獄へようこそ」ウクライナ市民のレジスタンスが始まった
・【まんがで分かる】プーチン最強伝説の嘘とホント
・【映像】ロシア軍戦車、民間人のクルマに砲撃 老夫婦が犠牲に


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中