最新記事

ネット

仕事ができる人は実践している 「お世話になっております」より効果的なメールの書き出し

2022年1月30日(日)08時00分
安田峰俊(ルポライター、立命館大学人文科学研究所客員協力研究員) *PRESIDENT Onlineからの転載
ノートパソコンでメールを書く女性

oatawa - iStockphoto


メールの書き出しには何を書くのが最適なのか。ライターの安田峰俊さんは「『お世話になっております』では意味がない。そのときの状況を踏まえて、『あなただけに話しかけている』ことを感じさせるフレーズを使ったほうがいい」という――。

※本稿は、安田峰俊『みんなのユニバーサル文章術 今すぐ役に立つ「最強」の日本語ライティングの世界』(星海社)の一部を再編集したものです。

20年前からなんら変わっていないメールの定型表現

ビジネスシーンにインターネットが普及した直後の時期である2001年4月、『eメールのマナーと常識』(誠文堂新光社)では、社外向けメールの文例が100通近く紹介されている。

そのうち、全体の4割くらいに「お世話になっております」に類似した表現がある。たとえばこんな感じだ。

△△株式会社 ○○様
お世話になっております。○○社の△△です。
昨日は遅くまでお付き合いいただき、ありがとうございました。
○○様は大の日本酒通とお聞きして選んだ店ですが、
お楽しみいただけましたでしょうか。
酒席ではございましたが、今後の財政改革に関するお話は、
たいへん興味深く拝聴いたしました。いつもながら○○様の
財界情報への精通ぶりに敬服いたした次第です。
何かとお忙しいとは存じますが、折りを見てまたお付き合い
いただければ幸甚に存じます。
今後ともよろしくお願い申し上げます。

20年前の文面ながら、冒頭部の「お世話になっております」と送信者の自己紹介、末尾の「今後ともよろしくお願い申し上げます」という定型表現の3点セットがそろっているので、現代人の目で読んでもほとんど違和感がない。

詳しくは拙著『みんなのユニバーサル文章術』で述べているが、この時期までのビジネスメールの書き方には、「貴社ますますご清祥のことお慶び申し上げ~」という手紙文のような文章形式を使う"堅すぎる派"と、逆に冒頭の挨拶もそこそこに気軽に話しかける"軟らかい派"が存在した。

しかし、「お世話になっております」ではじまるお馴染みのメール定型文は、ゼロ年代前半の比較的短い期間で、"堅すぎる派"と"軟らかい派"の両方を駆逐していく。

2003年の糸井重里氏のジョークがまだ通じる

かつて私が京都の某メーカーの新入社員だった2005年の時点では、すでに社員研修で「お世話になっております」式のメール定型文を教えられていた。もっと早期でも、たとえばコピーライターの糸井重里氏が2003年6月13日に自身のホームページ『ほぼ日刊イトイ新聞』に発表したコラム「オトナ語の謎」には、メールとホームページの話題の直後にこんな記述がある。

全国のオフィスでがんばる諸先輩方、
いつもお世話になっております。
たとえあなたと私が初対面でも、
いつもお世話になっております。
今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米7月雇用7.3万人増、予想以上に伸び鈍化 過去2

ワールド

ロシア、北朝鮮にドローン技術移転 製造も支援=ウク

ビジネス

米6月建設支出、前月比0.4%減 一戸建て住宅への

ビジネス

米シェブロン、4─6月期利益が予想上回る 生産量増
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 3
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿がSNSで話題に、母親は嫌がる娘を「無視」して強行
  • 4
    カムチャツカも東日本もスマトラ島沖も──史上最大級…
  • 5
    【クイズ】2010~20年にかけて、キリスト教徒が「多…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    これはセクハラか、メンタルヘルス問題か?...米ヒー…
  • 8
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 9
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 10
    ニューヨークで「レジオネラ症」の感染が拡大...症状…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 3
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経験豊富なガイドの対応を捉えた映像が話題
  • 4
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 5
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 8
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 9
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 10
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 5
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中