最新記事

中国経済

中国、金融規制強化で土地需要失速 入札激減で地方財政がひっ迫

2021年10月11日(月)11時59分
北京の工事現場

中国政府が民間不動産開発業者の借り入れを締め付けている影響で、都市部の土地入札は需要が落ち込んでいる。北京で1月撮影(2021年 ロイター/Tingshu Wang)

中国政府が民間不動産開発業者の借り入れを締め付けている影響で、都市部の土地入札は需要が落ち込んでいる。土地の売却収入に依存する地方政府は財政がひっ迫し、不動産税など新たな財源探しを迫られる恐れもある。

昨年の土地売却は過去最高の8兆4000億元(1兆3000億ドル)と、オーストラリアの年間国内総生産(GDP)に匹敵する規模に急増。新型コロナウイルスのパンデミックに見舞われた地方政府の財政を支えた。

しかし、規制当局が昨夏以来、民間不動産開発業者の借り入れ規制を強化すると、土地の需要は先細りとなった。ロイターが財政省のデータを基に試算したところ、今年8月の全国の土地売却総額は前年同月比17.5%減と、昨年2月以来の大幅な落ち込みを記録した。

地方政府は平均で収入の2割を土地入札に頼っており、土地需要がさらに減れば、財政支出や投資を削減せざるを得なくなるかもしれない。

エコノミストの多くは、不動産市況の冷え込みや、不動産大手、中国恒大集団の経営危機が余波を広げるリスクを理由に、中国の今年の成長率予想を引き下げている。

収入を増やすために債券を増発し、債務負担が増える地方政府もありそうだ。アナリストは、異論の多かった不動産税の導入計画を急ぐ地方政府すら出かねないとみている。

ANZ(香港)のシニア中国エコノミスト、ベッツィー・ワン氏は「地方政府は全般に収入に占める土地売却の比率が非常に高く、20%を超えている。従って土地売却が落ち込んだり、伸びが鈍れば、地方政府の支出に一定の圧力が掛かるだろう」と述べた。

弱まる土地需要

当局は今年2月、22の大都市の土地入札について、年内は3回にとどめると発表した。不動産価格が最も高い都市で地価、ひいては住宅価格を抑制するのが狙いだった。

当局は入札価格への上限も設けた。経済や社会の不均衡是正を目指し、広範な産業を締め付ける習近平国家主席の政策の一環だ。

だが、資金繰りの苦しくなった不動産業者が参加を見送ったため、土地入札は3─6月期の第1回以降、需要が減少している。

ロイターが1000件余りの告示情報を分析したところ、現在進んでいる6─10月期の入札は9月30日時点で、入札が撤回されたり、応札がなかった区画が全体の約40%に達していた。第1回入札では5%だった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、米国に抗議 台湾への軍用品売却で

ワールド

バングラデシュ前首相に死刑判決、昨年のデモ鎮圧巡り

ワールド

ウクライナ、仏戦闘機100機購入へ 意向書署名とゼ

ビジネス

オランダ中銀総裁、リスクは均衡 ECB金融政策は適
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生まれた「全く異なる」2つの投資機会とは?
  • 3
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地「芦屋・六麓荘」でいま何が起こっているか
  • 4
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国…
  • 5
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 8
    レアアースを武器にした中国...実は米国への依存度が…
  • 9
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 10
    反ワクチンのカリスマを追放し、豊田真由子を抜擢...…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中